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感想
「外山は現代では評価され得ず、未来には評価される」
この言葉は、名誉という本質への問いかけであるとともに、権威というものへの問いかけでもあるだろう。
その問いかけを行うなかで、なだいなだ『権威と権力』は非常に参考になる本だ。
外山氏の思想のすべてには賛同できないが、彼の精神力と行動力から学ぶべきことは大いにある。
民主主義について、自分はさほど突き詰めて考えたことはないが、ある程度は考えた自負はある。
「若者がもっと選挙に行かないと社会は変わらない」
自分はこの命題は無意味だと確信している。
選挙に行くこと自体にはあまり意味はない。(だからといって民主主義の意義までは否定しない)先に問うべきはやはり選挙以前の、もっと本質的なことなのだから。
「選挙に行こう」というスローガンの陳腐さに辟易しているだけである。
例えば、『そうしないことはありえたか?』を読んで分かったのが、小さな問題を突き詰めると必然的に大きなことを考えざるを得ないということであった。
パラフレーズすると、つまり政治について考えることは倫理について考えることであり、カントに言わせれば倫理を考えることは普遍的な自由の法則について考えることなのである。
そしてこの問いは自分自身で行わなければならず、決して教えられるものではない。
・・・
『教育哲学事典』を読んで分かったのは、ソクラテスでさえも、真理は教えることができないと結論づけたことであった。
答えはない。だから自分で考える。
考えて貰うことは「教条主義」と成り果てる。
「教条主義」の果ては『権威と権力』に書かれている。
考えるヒントとして西部邁の保守思想は手がかりとなるはずである。
保守主義:活力、公正、節度、良識の平衡状態を保つために絶えず不断の努力を行う態度
そして西部は活力、公正、節度、良識の詳細は各々の平衡状態によって保たれると語った。
自由と秩序の平衡はバイタリティ(活力)
平等と格差の平衡はフェアネス(公正)
博愛と競合の平衡はモデレーション(節度)
合理と情操の平衡はボンサンス(良識)
保守とは「平衡の知恵」だと西部氏は語った。
保守が必ずしも正しいとは限らないが、様々な考えを取り入れながら日々変わる状況にどう対処すべきか、未来は一人一人に委ねられる。
過去の読書日記に立ち返りながらいろいろと考え、結果的には良い読書時間であった。
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読書日記1277
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メモ
ポストモダンの逆説・・・文学、美術、音楽、建築などあらゆる芸術分野において、もはや指導的な理念はない、ということがいつのまにか指導的な理念となっている。
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日記
『大人になったら、』
1月は負荷をややかけていたので、岩波文庫から離れたくなってしまった。
一旦、もっと軽くて楽しいものを、と思い同時代的なものを読みたくなった。
物語りの舞台はチェーン店のカフェである。
社員は3人。店長、副店長の主人公、若手のイケメン社員。その他アルバイトが数名でまわす。
自分も新入社員時代はホテルの洋食レストランで働いていたので当時を思い出した。
・・・
作品として、本書は優れていると思う。
読みやすさ、テンポの良さ、エンターテイメント性。どれも素晴らしい。
だからこそ楽しく読める。
しかし登場人物の言葉にはまったくなびかない。これは自分が成長したからなのか、退化したからなのか。
もう少しで読み終わるのでそのときに感想を書きたい。
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『ポストモダンを超えて』
西洋は文字を記号と見る傾向がある、ということが語られた。
漢字はそれ自体、物語性がある。西洋人はその感覚が分からないかもしれない。
そのためか、分析哲学、合理主義、還元主義など、物事を細分化し、徹底的に「分ける」癖が強い。
それでは本質は掴めないだろう、というような内容に面白さと深さを感じた。
テーマは「総合」。
本と本をつなげる醍醐味はここにある。
ひとつの物事を突き詰める研究者に自分はなれないので、学者には敬意を持ってるが、やはり一点集中型には限界があるだろうと日々感じる。
別の本で知ったが、アメリカには日本のような「学部」という概念がないようである。
専攻と副専攻の二つを学ぶようである。
それに対し、日本は一点集中である。
自分の妄想でしかないが、日本の景気低迷の原因のひとつにはやはり教育システムが関係しているようにみえる。
人生で一番勉強する時期が高校(大学受験)というのがそもそも可笑しい。
つづく
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