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戸谷洋志/百木漠『漂泊のアーレント 戦場のヨナス』読了 + 読書日記1292

戸谷洋志/百木漠『漂白のアーレント 戦場のヨナス』慶應義塾大学出版会 (2020)

つづきを読み終えた。

(読書日記1291に収録)

 

nainaiteiyan.hatenablog.com

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感想

 

全体主義の起源』とシオニズムについて本書からいろいろと学びとることができた。

全体を通してふり返ると、非常に読みやすい文書と深い内容も兼ね備えた、かなりの良質な本だと感じた。

 

今日は風邪気味で少々体力がなかったので、いつもより雑なまとめになってしまうかもしれない。

後半の内容をさらっとまとめてエピローグのようなものを書いて締めたい。

 

・・・

 

後半はテクノロジー批判であった。

ざっくりとまとめると、ヨナスはテクノロジーの進歩とともに、そこから発生する「不調和」を調整する存在と成り下がり、人間が飲み込まれていく主旨の批判をしており、アーレントはテクノロジーによってリアリティが喪失することによって公共の空洞化を訴えた。

 

"ヨナスによれば、テクノロジーは問題を解決したり全体を調和させたりするものではなく、むしろ、全体に対して絶え間なく不調和を引き起こすものである。その不調和を調整すること自体が、テクノロジーの進歩の燃料になる。しかしその「フィードバック」もまた新たな不調和を引き起こす。そうして無限に自己増殖していく点にヨナスはテクノロジーの本質を洞察している。" P286

 

具体例がなかったのでこれが何を示唆しているのかは読者の読解力と想像力に委ねられた。

自分は例を考えた。

例えば医療の技術が発達すると寿命が必ず延びる。すると今日、たびたび報道がなされるように高齢者による交通事故が増える。

 

 

制度を見直すため「調整」する仕事が一時的に増える。

しかし長期的に見れば不毛な仕事かもしれない。

自動車の全自動化が現実味を帯びている。

高齢者ドライバー問題が解決する前に、先に全自動化が完了してしまうかもしれない。

すると今度はそこから起きる新たな問題に関する調整業務が生まれる。

 

・・・

アーレントはリアリティの喪失を指摘した。

例えば宇宙の広さは3×10の80乗立方メートル、と表されるように、考えることはできるが想像することができないという事例が多く存在する。

 

既にSNSでこうした事態は生まれていると言える。

何気ないコメントがどれだけ相手を傷つけるか、何気ない動画の投稿が企業にどれだけの損害を与えるのか。

むしろ想像どころか、考えることすらできていない層が増えているのではないか。

自分もその例外ではないのかもしれないが、そう思えて仕方ない。ある種の人間の限界かもしれない。

 

 

"テクノロジーによるリアリティの変質は、人々を孤独にさせ、全体主義を立ち上がらせる環境を準備しうる。" P299

 

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読書日記1292

バーナド・ウィリアムズ『生き方について哲学は何が言えるか』ちくま学芸文庫 (2020))

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日記

 

おそらくは身体の不調が原因で思考がマイナスのほうにいってしまったのかと自分には思われたが、とにかく今日は活力がない一日であった。

最低限の仕事をこなし、最低限の量の本を読み、最低限の文書を書くので精一杯である。

 

 

怒りやイライラもいつも以上に強烈であった。

これは根拠がないが、コロナ禍以降、風邪が治りにくくなった気がしてならない。

一週間ほど軽い倦怠感があり、とてもではないが都心の書店に行く元気すら出ない。

不完全燃焼の3連休。

参ってしまった。

 

 

こうして文書を書いて気持ちの整理をつけることでなんとかバランスを保つことができているのかもしれない。

「そんな程度のことで、、」

新入社員の頃はよく言われた。

お前より何倍も苦しい仕事を抱え、それを乗り越えている人なんて山ほどいるんだぞ、と言わんばかりに。

 

 

『漂白のアーレント 戦場のヨナス』を読み終わって感じたことを思い出した。

なぜテクノロジーの進歩と日本人の幸福度は比例しないのか?

これは致命的ではないか?

なんのためのテクノロジーなのか?

 

 

明らかにおかしい。

絶対的におかしい。

日本人の幸福度調査の精度を自体を疑うまでもない。

溢れる誹謗中傷と年間自殺者数、増加傾向にあるうつ病患者数を見れば、いつの日本もたいして変わらないだろうと自分は思う。

 

 

話が脱線してしまった。

本書は功利主義を低俗とみなしながらもソクラテスに批判的な、奇妙な本である。

まだ少ししか読めていないが、もう少し先へいってみたい。

 

つづく

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関連図書

 

 

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