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島田雅彦『パンとサーカス』講談社 (2022) 読了

島田雅彦パンとサーカス講談社 (2022)

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感想

 

約550ページにもわたる政治小説をようやく読み終えた。

初めてこのブログに遭遇してしまう方もいると思われるので軽くあらすじを書いて、そのあとに感想を書いて終わりとしたい。

 

・・・

 

あらすじ

まず、独断と偏見で判断すれば、主要メンバーは寵児、空也桜田マリアの3名である。

空也桜田マリアは腹違いの兄弟であり、寵児と空也は高校の同級生であり親友である。

物語は場面が変わっても常にこのなかの誰かの視点で描かれる。その意味でこの3名はこの小説において主役である。

 

 

寵児という人物の父親が会社の不正によって自殺にまで追い込まれた。

彼は留学先で奨学金を貰うための条件「A」を取れず「B+」を取ってしまい、父親の死によって金銭的にアカデミズムの道が閉ざされたが、担当教授からCIAの試験を推奨される。(寵児の修士論文のタイトルは「元型を乗り越えて:国譲り神話から占領政策まで」であった)

 

 

そしてCIAの難関を突破し、寵児はいわゆる「インテリジェンス」に従事することになる。

一方、親友の空也という人物の親は反社会勢力の人間であった。彼の親の働きかけでとある会社に従事。

二人は別々の道を歩んだかに見えたが「強い正義感」という共通点によってある時交差する。

そしてテロ(要人の暗殺)による「世直し」の計画が進行していく。

 

・・・

 

感想

 

ざっくりと、荒く要約するならば、この小説は日本がアメリカに「自発的従属」していることを懸念しているようにみえる。そして中国の脅威。日本はアメリカという盾が無くなればあっという間に「中国」に屈することを示唆するものである。

 

 

本書の38ページに書いてあるように、日本は外圧に屈した歴史が少なくとも5回あった。

本書に則せば、それは

白村江の戦い

「蒙古襲来」

南蛮人の渡来、キリスト教の伝来」

「黒船来航」

第二次世界大戦後のアメリカによる占有」

であった。

 

 

外圧がなければ日本は腐敗する、と島田氏は寵児に語らせている。

つまり6回目の外圧は近いですよ、という内容であった。

 

 

・・・

 

感想としては、まずインテリジェンスについては個人的に全く知らない(KGBという名称くらいしか知らない)のでどこまで忠実に再現しているのか、どこからどこまでが現実離れした作り話なのかが分かりにくかったところが本書の理解の壁となっている。

 

 

従って、本書を批判的に見ることは難しい。

ただエンターテインメントとしては相当レベルの高いものであることは疑い無い。

ここまで緻密に作られた小説は初めて読んだと感じた。

 

 

しかし、「陰謀」だとか「暗殺」だとか、どうしても暴力的な側面が印象として残ってしまう。

「世直し」という言葉も個人的にはあまり好まない。それは「傲慢さ」が滲み出ているからである。

「世直ししてやる」と考える人間がトップに立ったところで、法が適切に機能する統治システムを築けるとは到底思えない。

 

 

本書の読書を通じて法の欠陥について考えさせられるし、経済の在り方、自立した精神の在り方、道徳の在り方(組織のなかでは絶対に忠実であるべきかどうか等)、日本全体が「政治的無関心」から「自発的従属」にならないための教育の在り方等、様々な方面の課題というものが浮き彫りになってきたように思う。

 

 

これに関連付けて、読書日記1018ではエドマンド・バークについて書きたいと思う。

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