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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1012

読んだ本

ジョン・デューイ『経験と教育』講談社学術文庫 (2004)

藤本夕衣・古川雄嗣・渡邊浩一『反「大学改革」論:若手からの問題提起』ナカニシヤ出版 (2017)

島田雅彦パンとサーカス講談社 (2022)

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日記

 

ヒュームが「慣習」に着目し、それを科学的に捉えることが「政治学」であると『精神論ぬきの保守主義』のなかで仲正氏は述べた。

デューイも教育の本質を「慣習≒習慣」のなかに見てとる。

そしてその歴史の連続性のなかにありながらも普遍的な「知」をいかにして学生の興味の対象とさせるかを教育の問題と位置付けていることが読み取れた。

 

 

"どうすれば年少者は、過去の知識が現在の生活を理解するうえでの仲介者になるような仕方で、過去を親しく知るようになるのだろうか、という問題である。" (『経験と教育』)P28

 

 

難しいところは、単に好奇心を満たすだけにとどまるような経験は学生にあまり有益ではないというところである。

しかしながら、だからといって退屈な授業だけが重要であるとも言えない。

 

"相互に累積的でない経験は人の活力を拡散し、人を散漫にさせる。" (『経験と教育』P40 )

 

 

『反「大学改革論」』においては大学教育における「安易なグローバル化対策(英語力を上げる、主体性を高める等)」に処方箋を与える。

「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」のなかで、一部の人間からは「哲学と古典は不要」であることが言及された。

 

グローバル型の大学とローカル型の大学を区別したうえで、ある経営コンサルタントは「職業訓練が中心になるローカル型大学では学問よりも実戦力を身につけるべし」と提案した。

今までローカル型の大学、とりわけ文学部ではシェイクスピアの読解が代表例であったが、彼はそれよりも「観光業で必要となる英語、地元の歴史、文化の名所説明力」を挙げた。

 

 

それ以上詳細には書かれていなかったのでこのコンサルタントの主旨は分かりかねたが、これでは学生の関心が資格(TOEIC、IELTSなど)に向いていくのは自明だ。

インセンティブとして、資格の取得がそのまま単位になる大学も存在する。

 

 

観光業で必要となる英語、というのは通訳とまではいかないまでも、せいぜい英語で客に説明できる英語力といった程度に過ぎない。そんなものを最高学府の大学で勉強させようとするとは、日本もここまで堕ちたか、というところである。

勿論これはコンサルタントの意見であって、国が考えることは分かりかねるが、人文知の不人気さは健在である。

 

 

たしかに「なんのために生きるのか」「存在とはなにか」といった形而上学は実践的とは言えない。しかし大学で教える哲学は、厳密には「思想(他人が考えた思弁的体系)」であって、これが無用だとは言えない。

 

 

ヘーゲルを例にとる。

マルクスヘーゲルを徹底的に吟味した。そしてマルクス主義は世界的に影響を与えた。近代史、現代史には明らかにマルクス主義と直結している。レーニンは図書館でマルクスを徹底的に読んでいたことはよく知られている。そしてスターリンもまた、レーニンの影響を受けている。哲学は世界史と繋がっている。

 

 

「倫理」でさえも、三島由紀夫が「倫理を考えるとどうしても政治のことを考えてしまう」と言ったように、善悪に対する考察が全体性に向かうと政治へと考えが及ぶ。

政治を考えると世界恐慌以降、政府が経済に介入することによって「政治経済」としてセットで語られる。倫理から経済へ。

経済であってさえも資本主義を辿ればマックス・ウェーバープロテスタントの倫理と資本主義の精神』に行き着くだろうし、そのあとは宗教や歴史に繋がる。

 

 

 

また、「古典」でさえも、アダム・スミスホッブスの著作と経済が無関係であると言えない。

古典を辿れば法学を考えるきっかけになるだろうし、法学を学べば付随して政治に関心を持つだろう。

政治に関心を持てば思想や経済、文学にも興味は派生していく。

 

 

全ての大学がこうではないにせよ、やはり専門学校化する大学はどう考えてもおかしい。

 

 

・・・

 

パンとサーカス』は299ページまで読み進めた。

299ページあたりで非常に物語が動き出す予感を感じた。

もはや陰謀、テロ小説と化しているが構成が卓越しており非常に引き込まれる。

 

つづく

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