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読書日記1004

若園義彦『図書館長の本棚ーページの向こうに広がる世界ー』郵研社 (2016)

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日記

 

100ページほど読みすすめた。

図書館運営における現状と課題や、その背景を図書館長の筆者が自身の経験をもとに考察するという、内容的にとても興味あるものであった。

 

 

筆者は2006年12月5日、教育基本法の「改正」案が可決したことに触れた。

実際になにがどう変わって何が起きたかまでは言及されていなかったが、教育の問題を法律に「すり替え」ているという指摘には共感を抱いた。

教育について語ろうと思えばそれこそ一本の論文になってしまうので細かくは言えないが、時代が徐々に移り変わっていくなかで「軸」になるようなもの、社会学では「エートス」のようなものが問われているように思われた。例えるなら、激流にも動じない岩である。

 

 

・・・

 

筆者は2003年と2015年の新刊書と売り上げについて言及した。

2015年の発行点数は2003年よりも増えたが、売り上げは減少したという。

この原因について、筆者は文庫や新書の質の低下を指摘する。

数字が読者の答えであるならば、たしかに全体としては質が落ちているかもしれない。新刊書の発行点数が増えているにも関わらず売り上げが減っているからである。

 

 

予算が削減されると図書館に置かれる新刊書が貧しくなっていく。

新刊書が貧しくなっていくと図書館に活気が失われる。

しかし、新刊書を置きすぎると読者は本を書店で求めず図書館で「無料」で読む動機付けになる。

この点について論争があったようだが、筆者は議論が足りないと述べた。

 

・・・

 

個人的な感覚としては、新刊書が図書館に沢山置かれようが、それがそのまま売り上げに直結しない気もする。

筆者は教養を「知への接近方法」という表現をしているが、普通の感覚であれば物事というものは知れば知るほど別の方向に興味の対象が開けていくものである。

つまり、魅力的な本に沢山触れればまた別の本を読みたくなる。そしてまた次の本へ、次の本へ、という無限連鎖が始まる。従って、これがうまく機能すれば新刊書で溢れる書店の売り上げはむしろ伸びる可能性すらある。

 

 

筆者によれば、司書の「選書」が問われている。

地元の図書館にはたまに行くが、たしかに新刊書が少ない印象がある。

とくに芸術や音楽、哲学書のコーナーは古びている印象がある。

大型図書館はそんなにないので、中小図書館の存在意義は大きい。

その意味では、司書の責任は重大である。

 

 

しかし、筆者は「ネオリベ」の影響で図書館の運営に効率化が求められ、メリットはありながらも、業務委託には慎重であるべきだと語る。

 

 

 

「公共性」と「効率性」について考えさせられた。

これは「すぐに役に立たない知識」と「すぐに役立つ知識」とのアナロジーのようにも感じた。

知識という概念を二分法で語るのはナンセンスではあるが、公共性と効率性の「せめぎ合い」というのはやはりナンセンスではないだろうか。

 

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