はてなブログ大学文学部

読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

文脈読めない人間が多すぎるとか言いながら、切り抜き動画量産するのやめてもらっていいですか

つづきを展開 labo-dokusyo-fukurou.net この一文の中に、現代日本の言説空間のすべてが凝縮されている気がする。堀江貴文を筆頭に、インフルエンサーたちは口をそろえて「最近の人間は文脈を読めない」「言葉の意図を理解しない」「表面しか見ない」と嘆く…

ハイブリッドバグ社会としての日本

電車が遅れる。理由は「乗客の救護」。構内アナウンスは丁寧に繰り返されるが、列車の中では誰も声を発しない。スマホの画面を見つめる人々の表情には、怒りというより、うんざりした諦めが漂っている。たった一人の救護のために、数万人が足止めされる。そ…

可逆性功利主義と仕事

つづきを展開 nainaiteiyan.hatenablog.com 「まともな仕事をしろ」と吐き出した瞬間に、私はその言葉の向き先を疑った。否定したかったのは職業の尊厳ではなく、ふるまいの設計だったのではないか。正しくは「まともに仕事しろ」。人を断罪するより、手続き…

AIの可視性バイアス

「根拠はないけど学習はするAI」という逆説は、実はAIの欠陥ではなく、現代の知のインフラが採用している統治様式の露出である。統計的学習は、因果や検証を代替しない。ただし、大量反復を「じゅうぶんな証拠」とみなす近代以降の情報制度においては、反復…

形式主義・接客・人間

丁寧な接客をしてくれたお姉さんが、裏口で「マジ?」とこぼすのが聞こえた瞬間、私は透きとおったガラス越しの舞台を、ふいに袖から覗きこんでしまった観客になった。レジまでは温度管理された好意が流れ、声の抑揚は研がれ、語尾は丸められていたのに、扉…

Google Notebooklm活用のすすめ

公開データ『ケヴィン・ケリー著作選集』をAIに学習させマッピング化 ☆ここがすごい☆ すぐに要約してくれる。 図で整理してくれる。 ➡クリックするとテーマごとに詳しく解説してくれます 増大する無知 (The Expansion of Ignorance) のより大きな文脈におい…

今日のニュースです。ベーシックインカムが始まりました。

オープニング(0’30”)アナ(スタジオ)「こんばんは。トップニュースです。きょうから全国で“ベーシックインカム”の給付が始まりました。初回の入金はおよそ3,200万人。各地で申請不要の自動給付が進む一方、マイページのアクセス集中や詐欺の動きも確認さ…

哲学対話:福祉と自由

あなた: 今から持論を述べますが、800字以内で返してください。 福祉と自由経済について。 自由に競争することで市場は活性し、提供されるサービスの質があがることは疑いありません。インセンティブやモチベーションを考えると社会主義はあまり良い体制では…

読書梟は市場に出る——タレブ的投資メタファーとしての思索

I. 読書とは「非対称リスク取引」である 簿記一級は確実性への投資。次長は組織的安定への投資。だが読書梟は、「意味の非対称性」に賭ける投資家だ。誰も評価しない知を拾い上げ、市場が気づかぬ価値を抱え込む。それは一見、無駄であり、不確実であり、だ…

沈黙は「倫理の呼吸」である

あなたはこのエッセイから何を感じ取りますか。 法が遅いとき、人間は何を信じるか 行政の返事を待つ時間は、ある種の「法的な無音」の中にいるようなものだ。 こちらが送った文面は整いすぎていて、条文の裏づけも倫理的配慮も揃っている。だからこそ、沈黙…

タレブ×行動の倫理

ナシーム・ニコラス・タレブは、思索する人というよりも、行動する思想家である。彼の著書を読むと、そこに通底しているのは一貫して「言葉よりも行動を信用せよ」という姿勢だ。彼の世界では、真理とは理論の整合性ではなく、リスクを引き受けた行為の結果…

現代のうつ病=制度化された無気力

うつ病や適応障害がなぜ増え続けているのか――私はこの問いを、単なる医療統計の問題としてではなく、社会全体の精神構造の変化として捉えたいと思う。もちろん、精神科を受診することのハードルが下がったことは事実である。SNSやメディアがメンタルヘルスを…

『三國、燃え尽きるまで厨房に立つ』読了+新・読書日記610(読書日記1950)

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倫理学、選ばれず

いま、大学で最も選ばれない学問のひとつが「倫理学」である。哲学科の中でもさらに地味で、実用性がなく、就職にもつながらないとされる。だが、それは単に学生の関心の問題ではない。社会そのものが倫理学を“排除する構造”を内面化しているのだ。私たちは…

選ばれず、倫理学

人は口を揃えて言う。「結婚は中身が大事」「内面を見てくれる人と出会いたい」と。だが、婚活サイトを開けば、パンフレットを見れば、街コンのポスターを覗けば、そこに並ぶのは選ばれた美男美女ばかりである。誰もが笑顔で、光を反射するような歯並びと肌…

倫理の実践化をめぐる三層構造――身体/制度/言論

補足 labo-dokusyo-fukurou.net ・・・・・・・・・・・・・ タレブは『身銭を切れ』のなかで、倫理を「制度の外側にある理想」ではなく、「リスクを引き受ける身体的行為」として語った。彼の言う「身銭を切る(skin in the game)」とは、単なる比喩ではな…

身銭を切る読書

補足 labo-dokusyo-fukurou.net ナシーム・ニコラス・タレブが『身銭を切れ(Skin in the Game)』で説くのは、単なるリスク管理の話ではない。そこには、行為と責任を切り離した現代社会への倫理的告発がある。彼の言葉を借りれば、中央集権化とは「責任の…

自由の制度化という矛盾

Ⅰ.制度が自由を守るとき、自由は制度に取り込まれる 「自由」とは何か。それは、束縛からの解放であると同時に、自己決定の原理でもある。しかし、国家や社会が「自由を保障する制度」を設けた瞬間、その自由は形式として管理されるものになる。つまり、自…

選別の美学

つづきを展開 labo-dokusyo-fukurou.net 私たちは、毎日、選んでいる。選びながら、気づかぬうちに何かを排除している。きれいなもの、やさしいもの、整ったもの、可愛らしいもの――それらを「好む」という名のもとに選び取ることが、いつしか「美の習慣」と…

アダム・スミスの時代と今の時代、ビジネスの在り方はどう違うのか?

アダム・スミスの時代(18世紀後半)と私たちの時代(21世紀)を比べると、単に「技術」や「制度」が変わったというよりも、「人間の信用と市場の関係のあり方」そのものが転倒している、という点が最も重要な違いです。 以下、3つの観点から具体的に整理し…

新・読書日記600(読書日記1940)

ドストエフスキー『死の家の記録』(光文社古典新訳文庫) labo-dokusyo-fukurou.net

平均の形式化による暴力

つづきを展開 nainaiteiyan.hatenablog.com nainaiteiyan.hatenablog.com 「普通でいようね」という言葉ほど、無害を装った暴力はない。優しさの仮面をかぶりながら、誰かを静かに排除する。それが“普通”という名の呪いだ。私のように形式にはまらない人間は…

普通という呪文を解くために

つづきを展開 nainaiteiyan.hatenablog.com nainaiteiyan.hatenablog.com ・・・・・・・・・・ 「中間層から抜けたい」。そう呟いたとき、私は貧困を望んでいたわけではない。むしろ、何かを“持っている”ことにうんざりしていたのかもしれない。一定の収入…

不毛なコード化やめてもらえませんか?

清潔感とは何か、と問われて、正確に答えられる人はいない。 それでも社会は、この不確かな概念をまるで倫理的基準のように扱う。 「清潔感がある人」「清潔感がない人」。 この単語の中に、どれほど多くの偏見、階層、そして暴力が潜んでいるかを、どれだけ…

条件付き条件やめてもらえませんか?

「誠実な方が好きです」と、人は言う。 それは一見、最も無害で、誰も傷つけない、道徳的なフレーズのように見える。けれど読書梟は、この言葉ほど虚しい条件を知らない。誠実とは何か、その定義を問われても誰も答えられないまま、それがいまだに「人間とし…

3位より2位、2位より1位バイアス

2位の人に出会った。穏やかで、思慮深く、私の言葉をよく聞いてくれる人だった。そこに何の不満もなかったし、むしろ幸福の芽のようなものが確かに芽吹いていた。けれど、次に1位の人に出会ってしまった。その瞬間、私の感情はまるで何かのスイッチを押され…

感じない社会の倫理

「きょうき」と検索すると先に「共起」が出てきて次に「狂気」なんですが、この順番とイデオロギーは関係ありますか? ChatGPT: とても鋭い観察ですね。「きょうき」と入力したときに先に「共起」が出て、その後に「狂気」が出てくる――この順番は、一見単な…

1億分の1で生まれ、100分の1で凹む――滑稽の倫理

人間は、たかが100分の1の確率で選ばれなかっただけで、ひどく落ち込む。 それがどれほど滑稽なことか、頭ではわかっている。なにしろ、私たちはそもそも1億分の1の確率で生まれた存在だ。精子の数を1億とすれば、そこからたった一つだけが卵子に到達し、受…

誠実の不透明性――性悪説時代の倫理

人はなぜ、正直であるよりも、軽やかである方を好むのだろうか。 ある観察の場で、私はその問いを繰り返し思い出していた。言葉の応酬は軽快で、笑いはよく響く。だが、その滑らかさの中に、どこか奇妙な透明さ――つまり「誰の言葉にも重さが宿らない」状態――…

沈黙とアフォーダンス

沈黙するということは、単に声を発しないということではない。沈黙には、他者に「話させる」力がある。たとえば会議の場で、誰かが意図的に黙るとする。すると、空気が変わる。静まり、緊張が生まれる。その沈黙は、言葉の不足ではなく、沈黙自体がアフォー…