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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1276

読んだ本

フェルナンド・ペソア『新編 不穏の書、断章』平凡社ライブラリー (2013)

デニス・ウェストフィールド『外国人には奇妙にしか見えない 日本人という呪縛:国際化に対応できない特殊国家』徳間書店 (2023)

藤原賢吾『人民の敵 外山恒一の半生』百万年書房 (2023)

島田裕巳『世界史が苦手な娘に宗教史を教えたら東大に合格した』読書人 (2023)

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日記

 

どれも面白い本であった。

なかでもやはり外山氏の本が痛快だった。良い読書時間であった。

 

・・・

『日本人という呪縛』

これはいろいろと考えさせられた。

「国のために戦えますか?」のアンケートは上位がモロッコ、フィジーパキスタンベトナムと、90%前後という結果で、下位はベルギー、ドイツ、オランダ、日本の順で、日本は約10%であった。先進国は概ね低いように見えた。

解釈の仕方は無数にあるのでこの数字が何を意味しているのか、厳密には答えが出せないが、自分は日本の低さについてのみ、少し考えた。

 

 

日本人に「あなたは日本が好きですか?」と言えばおそらくほとんど「はい」か、あるいはそれに近いと答えるだろう。

それは日本という恵まれた「環境」への愛であって、国への愛ではない。もしかすれば、この恵まれた環境が崩壊すれば日本脱出の選択肢を取る人が増えるかもしれない。だから国のためには戦いたくないのかもしれない。

 

 

単純に、第二次世界大戦の悲惨さを多くの国民が知っているから、もう戦争は絶対にしたくないという表明かもしれない。だからこのアンケートは、ある側面では単純すぎて無意味なものかもしれない。

 

 

他にも「報道ー行政ー政府」の癒着、政府への監視機能の低下、既得権への固執による弊害、選挙システムの問題など、ありきたりな話題が語られた。日本は世界から見ても合理的でないシステムが無数にある。都知事選の供託金は300万円?信じられない、といった論調であった。

 

 

反グローバリズムの左翼はこういうところをつつくのが得意で、説得力があるように思える時期が自分にはあった。

今はあまりそうは思えない。

政治システムと生産性にはどのような因果関係があるというのだろうか?

 

 

そこがハッキリしない。

マックス・ウェーバープロテスタント解釈がどこまで正しいのかは分からないが、プロテスタントにはプロテスタントなりの強力な行動原理があった。日本はどうか。日本は表向き無宗教で、何が活力の源泉なのかいまいち分からない。政治経済学という眼鏡からは見えないことが数多にあるはずである。だからこういうこと(なぜ日本は不景気がつづくのか?といった問い等)を安易に断定できる言説を持つ人を自分は信用しない。

 

・・・

『世界史が苦手な娘に宗教史を教えたら東大に合格した』

ニーチェの「ツァラトゥストラ」の語源がゾロアスター教のことだと初めて知った。

本書は教科書的な本ではなく、惹き付けるなにかがある。一度MARUZENで本書を見かけたが買わなかった。もう一度立ち読みしたら読みたいと思った。

昨日読んだ『執行草舟の視線』と似たようなことが書かれていた。

(著者はアンドレ・マルローの研究者、竹本忠雄氏)

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

三島由紀夫を読むには古典やギリシア哲学、神話、宗教の知識も必要だろう。

 

 

 

本書を読んで哲学史と宗教史の親和性を改めて実感。

世界史と哲学と神学を少しづつ自分のなかで繋げていきたい。

この本は楽しく宗教史について勉強できる。

 

・・・

『人民の敵』

300ページ弱まで読み進んだ。

共産主義社会主義アナキズムのどれをとってももはや資本主義の加速には抗えないだろう。現代思想ニューアカ以降そのような空気にあることは仲正昌樹ポストモダン左旋回』に書かれていた。

 

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

『テロルの現象学』の著者、笠井氏と外山氏の対談が面白かった。

"もうひとつ、アナキズムは主権権力の問題を何も考えないために常に負け続けて、従って悪いことはあまりしなかった。つまり、フランス革命以来でも、もっと前からでも、大衆的な蜂起に対してそれに対するヘゲモニー(支配的立場)として登場する組織的な力というのが、敵である主権権力に対してどういう態度を取るべきなのかはいまのところ解決策がない。主権権力になってもだめだし、無視してもだめだということが20世紀の経験で分かった。では、21世紀は主権権力になることを拒否しながら、アナキズムのように主権権力から逃げないような道を考えなければならない。" P239

 

 

真面目な話もあったが、だいたいは破天荒な話ばかりであった。

痛快で、面白い大人もいるもんだなと思った。

30代以降の外山氏は思想がある程度確立していっているように思えた。

さすがに無知、無力さを感じたのだろう。

何故か本書を閉じたあと元気をもらった。

(念のために書いておくが、自分は革命を行うことには全く興味はない。)

 

・・・

『新編 不穏の書、断章』

メモを書いておいた。

この文章を読みながら、「あの作家がそのまんま当てはまるな」と笑いそうになった。

 

"すべては不合理だ。ある男は金を稼いで貯金することに一生を捧げているが、それを残してやる子孫もなければ、自分の財産を神様が天国へと運んでくれる希望もない。ある男は有名になることに一生懸命になっているが、その名声は死後のものだ。だが、この名声を享受できるはずの死後の生があることなど彼は信じてはいないのだ。またある男は自分にはまるで興味のないことを一生懸命に探求している。また、ある男はさらに進んで......。徒労にも、ただ博識になるために読む者もいれば、生きるために、これもまた徒労に、快楽に耽る者もいる。" P170-171

 

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