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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1062

読んだ本

佐藤優『生き抜くための読書術』扶桑社 (2023)

仲正昌樹ヘーゲルを越えるヘーゲル講談社現代新書 (2018)

つづきを読み進めた。

 

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日記

 

佐藤優氏の本からは神学、とくにカール・バルト関連やマルクス主義について学ばされることが多々あった。

『私のマルクス』では『資本論』をろくに読まず全共闘に参加していた若者について語られていたことを覚えている。

 

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佐藤優氏の本をきっかけに副島隆彦という人物を知った。

 

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副島氏は伝説の「小室ゼミ」の受講生であったことを『評伝 小室直樹』で知った。

 

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宮台氏も小室ゼミの受講生であったことも知った。

かくして点と点が繋がっていった。

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・・・

 

『生き抜くための読書術』は具体的な読書方法についてはあまり語られていないが、政治、経済、人生、恋愛、結婚など生活に直結する話題についてひとつひとつ丁寧に参考文献に依拠しながら佐藤氏の持論が展開されていく。

非常にコンパクトに文章がまとまっているので時間がかからず、ざっと読むことができた。

 

 

失われた三十年の原因について、佐藤氏は立命館大学松尾匡教授の見解が正解だと思うとのべた。

"<1997年の消費税引き上げをきっかけとして、日本は本格的なデフレ不況に突入し、完全失業率が未踏の5%台の時代に入ります。日本はもう成長しないとか財政が足りないとかさんざん煽った中に、職を失った人や就職できない大量の若者が放り出されたのです。(中略)くだんの「問題意識」に基づいて既得権を攻撃するのなら、そんなうるさいことを言わない新自由主義者にやってもらったほうがいい。そもそも不況でも雇用が守られた大きな正社員労働組合は彼らの目から見たら「既得権」層と映っていますから、しがらみがない分徹底的にやってくれるということになります。だからたくさんの人たちが、「自民党をぶっ壊す」と言った小泉純一郎さんの「改革」や、公務員を既得権者として攻撃した橋下徹さんの「改革」に熱狂したのです。> (『左翼の逆襲』8項) " P126

 

佐藤氏も今後の日本にはイノベーションが必要と語るが、その環境が日本にはないとひろゆき氏は語っている。

というわけで宮台氏は「崩壊を加速させよ」と言っているという話であった。

 

・・・

 

ヘーゲルを越えるヘーゲル』の内容はなかなかに難しいので、理解できなくとも一応頑張って最後まで読んでなにかを掴めれば良いと思った。

池田晶子ヘーゲルを「こんなに分かりやすいものはない」と言っていたので、池田晶子の本を耽溺した自分なら多分少しは分かるだろうと思い、今日は哲学者コジェーヴによる「主/僕」解釈について学んだ。

 

 

ひとまず重要だと思うことをメモに残した。

以下はコジェーヴの論述である。

"自己意識が存在するには、哲学が存在するには、所与としての自己に関して、自己の超越がなければならない。そしてこれは、ヘーゲルにすれば、欲望が、所与の存在ではなく、存在しないものに向かわなければ不可能だ。存在するものを欲すること、これはこの所与の存在によって自己を充たすこと、自己をこれに隷属させることである。存在しないものを実現することである。(・・・) 換言すれば、実在する所与の物に向かう動物的欲望の充足へと定められた活動は決して自己意識する、人間的自我を実現するには至らない。" P91

 

「主/僕」の弁証法によって精神が進歩する過程についてコジェーヴは述べているわけであるが、池田晶子がよく語っていることに則せば、欲望にがんじがらめにされることは欲望の奴隷ということであって、それは不自由であるから、それを克服しなければ人間的自我は得られない、ということを言っているように感じた。

 

・・・

 

本書は次にポスト構造主義の話に移っていくが、自分はここで宮台氏の『崩壊を加速させよ』の内容と繋げながら解釈していった。

宮台氏によれば「社会」とは言語コミュニケーションで成り立っている世界であった。

なぜ宮台氏は「クソ社会」と呼ぶのか。

 

 

仲正氏は本書のなかでミシェル・フーコーの仕事を端的に述べている。

"フーコーは「主体」を制度的に支えている人間科学、臨床医学、精神医療、刑事政策、法、教育、性生活などを系譜学的に分析し、「主体」がそしてその基礎にある「人間」という概念が歴史的に構築されてきたものであることを、分野横断的な大量の史料の読解によって実証していくことで知られている。" P116

 

 

哲学者イポリットはヘーゲルの「自由」は「死」と表裏一体関係にあると暗示している、と仲正氏は述べ、「人間の終焉」について120ページ前後にいろいろと語られているわけであるが、テーマ的にはこれがウェーバーの「没人格化」と繋がっているように感じた。

 

 

"フーコーに言わせれば、「規律権力」が浸透した近代社会において「主体 sujet」になること、一人前の大人として認められることは、「規律」に順応する「従順さ」を身に付けることである。" P119

 

 

ここで自分はアイヒマンを想起した。

ナチスとしては一人前であるがヒトラーに「従順」であったがゆえに人道から外れた。

しかしアーレントからすれば「凡庸な悪」であり、意志のない普通の人間に映った。

 

 

これが「没人格化」ということなのか。

宮台氏にいわせればアイヒマンの行動はたしかに「損得マシーン」であり「法の奴隷」であったのかもしれない。

 

 

「本当の自由、あるいは真の意味での主体性」について考えさせられる一日であった。

 

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関連図書

 

 

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