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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1048

読んだ本

デューイ『民主主義と教育 上』岩波文庫 (1975)

フリードリヒ・フォン・シラー『改装版 人間の美的教育について』法政大学出版局 (2017)

福嶋亮太『百年の批評:近代をいかに相続するか』青土社 (2019)

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日記

 

つい最近まで本を理解しよう、理解しようという気持ちが先行し、読みながら自分で物事を考えるほうに重点を置けなくなってしまっていたように思われた。

今日は意識的にそのことに留意し、要所要所で時間を作り自分である程度深く考える、精読に近い読み方で読書を行った。

 

・・・

 

『書物というウイルス』などの著者、福嶋氏は文学について次のように語った。

「文学とは徹頭徹尾、自己形成的な「プロジェクト」なのであり、多元的なプレイヤーの相互批評によってはじめて相続できるものである。」

 

 

その後福嶋氏の夏目漱石論を読み進めたが、論点がいまいち掴めず、夏目漱石を十分に読み込めていない自分からすれば、ハッキリ言ってその「相互批評」なる場に参加する「土俵」にすら立てないように思えた。

 

『書物というウイルス』が読みやすかっただけに、こちらのほうはかなり難解であった。

この本に深入りせず、その後は今日も芸術・文学・教育の領域横断的な読み方に切り替えた。

 

・・・

 

最近の読書日記は要約することにやや重点を置きすぎていたように思う。

たまには持論で空白を埋めてみたい。

 

デューイは本書のなかで「行儀作法は小さな道徳にすぎない」と述べていた。

共同体における伝統と知の継承に関する論考、文脈のなか、マナーについてデューイは語っていたのであるが、この場合「大きな道徳」というものは、広く言えば法律が問われる行為を指すものと思われた。

 

 

小さな道徳(ポイ捨てしない、約束は守る、信号無視をしない等)といった些末な規範は、守らずとも特段、人に大きな損害を与えるものではない。

しかし大きな道徳はそうではない。

 

 

環境が人にどのような影響を与えるのかをテーマに論じながら、デューイは意外にも、シラーと同様に美的な趣味が人々の退廃に抵抗できるものだと述べていた。

 

 

自分はここで道徳的価値と美的価値がいかに相反するものかを感じ取った。以下具体的に説明する。

 

・・・

 

大きな道徳とは人間社会の秩序を維持するために必要不可欠である。

(例:交通ルールを守る、暴力をふるわない等。広く言えば「違法行為」をしない)

大きな道徳を破れば損害は免れない。

しかし、違法行為をしないことにどれだけの「美的価値」があるというのだろうか。

 

 

普通に考えて、常識的に生活している人々(つまり「大きな道徳」を守っている人々)が高い「美的価値」を持っているかというと、それだけではそうだとは言えない。

逆に、小さな道徳を誰もみていない場所で忠実に実行し続ける人こそが「美的価値」を持っていると言える。

 

 

従って、道徳的価値と美的価値は反比例する。

この点は軽視できない。

長くなるので部分的に割愛するが、教育において「美的価値」を教授することは難しいからである。

難しいからといって軽視して良いことにはならない。

 

 

デューイは経験と学習について、例えば物の名前を覚えることは実生活で繰り返し経験するために学習は容易に行われていくことに言及したうえで、「民主主義」といった「観念」についてはそれを「経験」することが難しいために学習することの困難さを読者に語る。

 

 

大きな道徳は、究極的には小さな道徳の蓄積でなければならない。

「法律を破ってはいけない」

たったこれだけの命令があるだけで社会の秩序が維持されるのであれば苦労はない。

小さな道徳が破られてしまう人間の脆弱さによって大きな道徳の基盤が脆くなっていくのである。

 

 

美的教育の重要さとは、つまり小さな道徳の基盤を確固たるものにするための学習装置なのである。

従って、芸術作品としての文学作品にどんな意義があるのかといえば、以上のような抽象的な原理にあると思われるのであった。

 

 

くどいとは思うが、普通若い人は万引きすることのデメリットを考えはするが、小さな道徳を守ることのメリットまでは深く考察はしない。「人のためになるから」という答えが返ってきそうであるが、そうではなく、巨視的に考えれば小さな道徳は美学上の問題と接続され、それは「判断力」の問題になるのである。

 

 

そういうことをデューイやシラーは読者に語りかけている。

書きたいことがまだまだ沢山あるが時間がないので割愛したい。

 

 

つづく

 

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