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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

美と情報

僕はこの記事で美に関する逆説を示したい。 視覚は五感による知覚のなかで最も情報量が多く、少なく見積もっても80%はあるとのことである。ちなみに聴覚は約10%とされる。 ではいったい、どうして情報量の少ない聴覚、すなわり「音楽」が一般的に芸術にお…

美と想起

『ヴァレリー集成Ⅲ<詩学>の探求』(筑摩書房)を読みながら僕は考える。 ヴァレリーによると、詩というものはただただ精神の行為であるという。 詩というものは言葉、すなわち人間の内部から紡ぎ出される精神の連続体であるべきだという。 ヴァレリーはいう…

美と還元主義

還元主義は全体的な法則(=上位概念)を小さな、基本的な法則(=下位概念)によって説明しようとする立場にある。 また、耽美主義は道徳的な判断を放棄し、美を最高の価値とする態度である。 個人的に、耽美主義(=唯美主義)は逆接的に道徳を説明し得るのでは…

読書日記169

岡崎乾二郎『抽象の力:近代芸術の解析』亜紀書房(2018年) エリック・カンデル『脳はなぜアートがわかるのか:現代美術史から学ぶ脳科学入門』青土社(2019年)を読む。 『抽象の力』によれば、日本においても発生したキュビスムは、単に西洋を模倣したのでは…

読書日記168

田中慎弥『孤独論』徳間書店(2017年)を読む。 ついでに芥川賞の『共喰い』も購入。 この方は、30代になっても定職に就かずひたすら小説を書きつづけていた。 確固たる信念を持った、異端の作家である。 僕からすればこの方はアナキストでもある。 加えて、恥…

何もしらない

人生は草「哲子」 哲子「はいはい」 人生は草「僕は思うのだよ」 哲子「なにを」 人生は草「全知全能という言葉事態が虚構であると思うのだ」 哲子「なんで」 人生は草「世の中には答えがない問題などいくらでもある」 哲子「そんなの当たり前じゃん」 人生…

読書日記167

ダニエル・C・デネット『思考の技法 直感ポンプと77の思考術』青土社(2015年)を読む。 青土社は本当に良書をたくさん出していると感じる。 アクセル・ホネットの「承認論」を貧困理論と結びつけた『実存的貧困』も青土社から出ている。 nainaiteiyan.hatenab…

君は神

人生は草「おお哲子」 哲子「なに」 人生は草「今日は面白い人を連れてきたぞ。その名も「絶対に嘘をつく君」だ」 絶対に嘘をつく君「ども」 哲子「なにそれ」 人生は草「まあ見ててくれ。絶対に嘘をつく君。君は男性かね」 絶対に嘘をつく君「女だ」 人生は…

読書日記166

幸田真音『ナナフシ』のつづきを読み進める。(以下ネタバレあり) nainaiteiyan.hatenablog.com 保護した女性を病院へ連れていく。 先生は「軽症」とはいうものの、そうとは思えない。 今後のことを考えると医療費を確保しなければならない。 主人公は正義感…

思考はつづくよどこまでも

人生は草「お、哲子」 哲子「よく会うね、ひょっとして追跡してる?」 人生は草「まさか」 哲子「忙しいから早くしてくれないかな」 人生は草「察しがいいね、今日は時間と便利さについて聞いて欲しいのだよ」 哲子「へー」 人生は草「人は言う。便利な世の…

読書日記165

幸田真音『ナナフシ』のつづきを読み進める。 nainaiteiyan.hatenablog.com 主人公はリーマンショックによりファンドマネージャーを失職する。 勢いでドーナツ屋さんを始めるもののあっという間に店を閉める。 その果てにたどり着いたのがコンビニのアルバイ…

読書日記164

『理科の教室 千夜千冊エディション』のつづきを読み進める。 nainaiteiyan.hatenablog.com 今日はポアンカレ(1854-1912)の項からスタートだ。 松岡氏によれば、ポアンカレは数学の4部門を独自にカバーできた最後人物とされる。 (数論、代数学、幾何学、解析…

『グリーンブック』を観る

3日間に分けて、今日観終える。 これは実話の物語である。(以下ネタバレなし) 画像引用:映画.com http://www.eiga.com/movie/89815/ あらすじをざっくりいうと、高級クラブで用心棒をしていたトニー(画像左側)が問題を起こして仕事を辞める。 その後、トニ…

読書日記163

松岡正剛『理科の教室 千夜千冊エディション』を読む。 冒頭は『ロウソクの科学』から始まる。 『ロウソクの科学』は晩年のファラデーによるクリスマス講義が収録されている。 松岡氏がこれほどに感嘆できる本はないと断言するくらいに素晴らしい本であると…

読書日記162

幸田真音『ナナフシ』を読む。 今日ようやく幸田真音氏の本をみつける。 探していた『小説ヘッジファンド』はなかったためこちらを購入。 リーマンショックでファンドマネージャーからコンビニのアルバイトになった男の物語である。 この小説は今のところテ…

凛として咲く言葉の如く

人生は草「おお哲子」 哲子「また?今日二回目なんですけど~」 人生は草「いいではないか、早速聞きたいことがあるのだが」 哲子「忙しいから早くしてくれないかな」 人生は草「わかった。今回は難しいからさっそく本題にいこうじゃないか。哲子、パズルって…

読書日記161

『不確実性を飼いならす』のつづきを読み進める。 nainaiteiyan.hatenablog.com 統計学は2つの理論に分裂していることが書かれていた。 頻度論とベイズの定理。 頻度論は大数の法則などで有名で、後者は条件付き確率等で有名だ。 著者はどちらも必要であるこ…

朝井リョウ『何者』読了

こちらを読み終える。(ネタバレなし) nainaiteiyan.hatenablog.com 作家志望の僕としては、話の内容よりかは構成や文章の表現に目がいってしまう。 とはいえここでは感想を書いて終わりにしたい。 何者でもない大学生。 何者でもない自分。 それが不幸にもコ…

読書日記160

朝井リョウ『何者』を読み進める。 nainaiteiyan.hatenablog.com ついに隆良が怒られた。 プライドで固められた隆良の何気ない一言一言を仲間が見逃さなかった。 「100点じゃないと世の中に出せない」 隆良が別の人間とコラボすることによってクオリティが下…

意味と行為の近似

人生は草「お、いたいた哲子」 哲子「何、私を探してたの?」 人生は草「うむ。ちょうどいてよかったよ」 哲子「で、今日も何か語りたいの?」 人生は草「相変わらず察しが良いですな」 哲子「忙しいから早くしてくれないかな」 人生は草「哲子はなんでそん…

読書日記159

朝井リョウ『何者』のつづきを読み進める。 nainaiteiyan.hatenablog.com 隆良という人物が就活に嫌悪感を示している。 仲間が「オレは頑張るぞ」と言うと、 「何のために?誰のために?」 と突っ込みを入れる。 大学生の頃の僕そのままである。 隆良という…

読書日記158

佐高信『企業と経済を読み解く小説50』岩波新書(2021年)を読む。 この本は情報量が多くて買ってよかったと思っている。 世の中を支配している金融について知らないことが多すぎる。 そのため、まずは金融にまつわる小説を読むことで基礎的な知識をつけたいと…

読書日記157

朝井リョウ『何者』新潮文庫(2015年)を読む。 就職活動。懐かしい。 はっきり言ってあの頃から既に今の僕の基礎はできあがっていた。 何もかもがくだらないと思っていた。 就活は茶番だ、そう常に思っていた。 そして僕はことごとく面接で落ちまくる。 会社…

歩く歩道じゃないとは限らない

人生は草「おお哲子」 哲子「また人生は草かい」 人生は草「そんなこと言うなよ、聞いて欲しいことがあって」 哲子「別にいいけど。てか人生は草って友達いないの?」 人生は草「心のなかにいるのだ」 哲子「いないのね」 人生は草「そんなことはどうでもい…

読書日記156

ダニエル・C・デネット『自由の余地』名古屋大学出版会(2020年)を読む。 自由意志問題の名著である。 僕は本書のとある話に夢中になった。 アナバチはコオロギを仕留めると、巣の入口まで運ぶ。 そのあとコオロギを入口に置いたまま巣の内部を確認したらコオ…

読書日記155

『不確実性を飼いならす』のつづきを読み進める。 nainaiteiyan.hatenablog.com 気付けば話は統計学に切り替わっていた。 そして、僕は去年の院試を思い出した。 標準偏差、分散、相関係数。 基本はさらっと勉強したつもりではあるものの、話がどんどんアカ…

読書日記154

ポジティブ心理学を読み進める。 nainaiteiyan.hatenablog.com 時代はポジティブ心理学の登場によりヘドニア的幸福からエウダイモニア的幸福へのシフトしつつある。 本書によれば現代の政治哲学は大きく分けて3つに分類される。 ・自由型(リベラリズム、リ…

お金を入れると作動します

人生は草「おお、哲子」 哲子「また人生は草だ」 人生は草「今日は嫌気がさしたよ」 哲子「貴方はいつもそうでしょ」 人生は草「哲子はどうなのさ」 哲子「楽しく自由に暮らしてるからわかんないや」 人生は草「ぬぬ。羨ましい限りだ」 哲子「で、今日も愚痴…

読書日記153

玄田有史『希望のつくり方』岩波新書(2010年)を読む。 正直なところ、あまり読んでいて気持ちの良いものではなかった。 著書は「希望学」の研究をしてきたとのことであるが、研究から得られた量的なデータが全くない。 加えて本書の内容はほとんど僕が今まで…

読書日記152

イアン・スチュアート『不確実性を飼いならす 予測不能な世界を読み解く科学』白揚社(2021年)を読む。 確率に関する知識をアップデートしたく購入。 量子論とカオス理論も絡めて語られる。 昨日読んだ本と同時進行で読みながら知識を吸収していきたい。 nain…