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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1315

読んだ本

三砂慶明『千年の読書』誠文堂新光社 (2022)

池田晶子『無敵のソクラテス』新潮社 (2010)

門井慶喜『文豪、社長になる』文藝春秋 (2023)

エドマンド・バーク『崇高と美の観念の起源』みすず書房 (1999)

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日記

 

定期的に本屋さんへ行っているが、今日はパッとせず、持ち歩いていた本を読むことにした。

とはいえ、本の回転は早いように思う。

新書や文庫は新陳代謝が専門書のコーナーよりかは比較的早いので、つい最近出たばかりだと感じていた本のとなりには新入社員のように、横に沢山並んでいる。

時が経つのが早いというのは、すなわち本屋の新陳代謝も早く見えるということになる。

 

『千年の読書』

第四章「「お金」から見た世界」162項の寓話がとても面白い。

アメリカのビジネスマンが漁師のもとを訪ねる。そこのマグロが素晴らしく、どれだけ時間をかけて捕っているか聞く。

「ほんのちょっとした時間さ」と漁師は答える。

ビジネスマンが「残りの時間は何をしているのか」と聞く。

漁師は「遅くまで寝て、ちょっと漁をし、子供と遊び、妻と昼寝し、村をうろついてワインを飲み、友人とギターを弾く」と答えた。

 

そのあとの展開が面白い。

"アメリカ人はあざ笑っていった。「私はウォール・ストリートのエグゼクティブだ、君の助けになれるよ。もっと長い時間漁をして、大きなボートを買い、ウエッブにも宣伝できるじゃないか。成長計画を立てれば、もっと資金が手に入って、新しいボートも数隻買うことができる。そのうち漁船の艦隊が持てるようになる。魚を中間業者に売るだけではなく、直接加工業者に売ることができる。いずれ自分の加工工場を持つこともできる。商品を管理し、加工し、流通させることができる。この小さな漁村を離れて、コスタリカの首都サンホセに移り、やがてロサンゼルスやニューヨークにも行ける。漁獲から販売まで統合して、拡大した企業の仕事を第三者アウトソーシングすることも可能だ。」" P162-163

 

漁師は「で、それにはどれくらい時間がかかるのか?」と聞く。

ビジネスマンは「15年から20年くらいだ」と答える。

"「それが重要なんだ。時がきたら、上場して、企業の株を売る、君は金持ちになる。数百万ドル稼げるぞ」「なるほど、数百万ドルですか。で、それからどうするんで。」「小さな漁村を引退して、遅くまで眠り、ちょっと漁をして、子供と遊び、妻と昼寝をし、毎晩村をうろついてワインを飲み、友人とギターが弾けるじゃないか。」" P163

 

 

自分の人生に置き換えてみる。「で、それからどうするんで」の問いを先へ先へ考えてみる。今はそこまで明確な答えが出ない。思考が不足しているのか?そうとも思えない。いま自分ができること、やってみたいと思うことをセレンディピティに任せるのみである。

 

・・・

『無敵のソクラテス

池田晶子からすれば、ヘーゲルプラトンも言っていることは同じなのだそうである。

ただ、ヘーゲルは万人に理解できる仕方では書いていない。プラトンはそれをやってのけたから天才だと語った。

 

"ソクラテス プラトンの天才はどこにあると君は思うかね。池田某 真理表現に対話を用いたことです。これは画期的です。ご存知のように、真理そのものというのは、あんまりわかりきったことなので、言語表現が不可能です。わかりきったことを書くのは、わかりきったことを話すより難しい、黙っているのが一番だって、さっき私は言いましたが、それでもプラトンは表現しようとしたんですね。" P468-469

 

"池田某 「私は私を考える」、「考えるから存在する」、一人称と三人称の弁証法なんてのは、あなた、二人称なしで一方的に書くんじゃ、ヘーゲルになっちゃうわけですよ。そー、あの怒涛の大論理学、一人語りの独り言、本人以外は滅多にわからないというヤツね。真理なんだから内容としては同じでも、表現として上手とは決して言えない。理解されない、誤解をされる、あげくに空論と言われて、おしまい。" P472

 

 

池田晶子NHKで放送していたプラトンの理想国家に関する番組に、本の中でぶちギレていたのを思い出した。

「理想」という言葉は「努力」と同じ言葉くらい、非常に解釈の幅がある言葉だと思われた。

その証拠として、どちらも「理想論」、「努力論」という言葉が存在する。

努力しても失敗しかしない人、理想を掲げても失敗しかしない人。

イデア論」は全てを見透かしているのかもしれないと自分には思われた。

 

・・・

『文豪、社長になる』

菊池寛が31歳になって「オレはいったいなにしてんだ」と迷っているときに、芥川龍之介菊池寛に転機を与えるきっかけになった経緯が書かれていた。

勿論、本書はフィクションであることを謳っているのでどこまでが事実かは定かではない。

 

昨日読んだ小川哲氏の本にも書いてあった。何事も運の要素が大きい。

 

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

運に逆らおうとしても無駄かもしれない。

その諦めは「予定説」のカルヴァンと似ている。

そしてその逆説が今のアメリカを生んだのは事実である。

面白いと思った。

 

小室直樹による宗教社会学の本はこちらに)

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

・・・

『崇高と美の観念の起源』

第二編を読み終えた。

塵も積もれば100ページ。

半分までたどり着いた。

 

 

メモ

"人為的無限を作り出すもの、それは構成部門の継起と斉一性とに他ならない。" P82

 

"明かに建物の壮大さを損なうことの甚だしいものは、角が沢山あることに勝るものはない。" P84

 

"真の芸術家は観客に対して上品な錯覚を与えるべきであり、換言すれば手軽な方法によって最も高貴な構図を作り出さねばならない。" P84

 

(星空を指して)

”それの表面的な無秩序は、かえって雄大な感じを増大させる。” P86

 

 

第二編まとめ

"繰り返して言うならば、崇高は自己維持に属する観念でありそれ故に我々が有する感動的な観念の一つであること、その最強力な情緒は苦悩のそれであり、また積極的原因にもとづく快はこれに属しないということである。" P98

 

第三編 美について

 

バーク「何らかの確定的原理に還元し定式化されるとは私は到底信じない」

 

つづく

 

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関連図書

 

美学・芸術関係の本

 

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