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ミゲル・デ・ウナムーノ『アベル・サンチェス』幻戯書房 (2019) 読了

 

ミゲル・デ・ウナムーノ『アベル・サンチェス』幻戯書房 (2019)

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感想

 

簡単なあらすじ

アベルホアキンは親友であった。

のちにアベルは芸術家、ホアキンは医者になる。

 

 

しかし、エレナという女性が現れてから二人の仲はこじれる。(ストーリーとしては非常にありふれた恋愛物語であった)

アベルはかなりのモテ男で、エレナを愛するホアキンの願いは叶わず、エレナはアベルに奪われてしまう。

しかしアベルはあまりにモテるので浮気をする。(これも非常にベタな展開である)

それでもアベルとエレナは難なく結婚し、結ばれる。

ホアキンはその後別の女性と結婚したが、苦悩を抱え続ける。

 

・・・

感想

 

不条理の極みであるとともに、普遍的な人間心理と、これからも変わらないであろう真理がところどころに表れる、熱い物語であった。

狂気と情熱は紙一重か。いや、もしかすれば同じかもしれない。強烈な情熱にのみ、愛は宿る。狂気なき愛は存在し得ない。

情熱なき愛は自滅、打算なき愛は不滅。

 

 

多くの人間は、愛を不滅だと思いたがる。情熱的な愛は狂気と変わらない。

理性の範疇にある愛は愛ではない。

学問の天才は言うまでもなく情熱的(=狂気)であった人が多い。(ゲーデルが典型的だろう)

ゲーデルは取り憑かれたように論理学を愛したと自分は思っている。実際そうだったと思える。しかし限界を超えたゲーデルは亡霊の存在を自覚することになる。

愛もまた同じで、愛し続けるということはイコール狂気であり続けるということを思わせる物語であった。

熱しやすく冷めやすいというのは、持続不可能な情熱ゆえであって、狂気ではないという意味においては、まあ普通の人間なのだろうということだと思わせられる物語であった。

 

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関連図書

 

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