読んだ本
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日記
福田恆存が小説界隈のあれこれを語る。非常に正論だと感じた。
池田晶子は柄谷行人氏や蓮實重彦氏、田中美知太郎、養老孟司氏にはよく批判をしているが、小林秀雄と福田恆存に対してはあまり批判している印象を受けない。(小林秀雄は池田晶子が惚れ込んでいることが読んでいてわかる。)
池田晶子も書いていたように、福田恆存の思考は本質からスタートしているので、非常に細部にわたって考察されていることが、何となくではあるが読んでいて伝わる。
文章も明解で、マルクスがどうだ、カント的な○○がどうだ、レヴィナス的な○○だ、と抽象的なことをあまり書かないので非常に読みやすい。
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山城むつみ氏は『文学のプログラム』つぎのように述べていた。
"ちなみに、芸術には芸術的価値しかない、政治的価値などありはしないという議論は、芸術の使命がアジ・プロであるという主張と矛盾しない。(・・・)芸術は、ほかならぬ芸術的価値においてもっとも政治的に機能するのである。" P105 (『文学のプログラム』)
福田恆存は「職業としての作家」のなかでつぎのように述べていた。
"ひとは「職人」を通じて社会の恩恵に対して返済をおこなう。しかもその「見返り品」はあくまで現在の社会にとって直接、即座に、「役立つもの」でなければならない。来るべき新しい時代を招来せしめるような、したがって現在の社会を批判し、その崩壊を促すような行為は、その社会の関するかぎり「職業」として成立しえない。それゆえ、作家は自己の人間的優越性、社会に対する敵意をそのまま売物とし、職業とすることは許されない。作家はその職人気質において、はじめて職業となりうる。(・・・)したがって、万事にわたってただちに「見返り品」を要求する現代社会においては、作家で飯を食うのは容易な業ではないのである" P64-65 (『福田恆存文芸論集』)
本のことに関して書こうと思えばいくらでも書ける。それくらいに自分は矛盾というものと向き合ってきた。
少しだけ書いてみたい。
文学は役に立たない。100年前から言われている。
役に立たないので、基本的には無料で配られるティッシュと同じか、もしくはそれ以下の存在なのである。
しかし、「役に立つ」ということを突き詰めると、福田恆存の言うようにそれは「技術を提供する」ということだと見えてくる。(やや単純化しすぎだとしても)
経歴書に書く自己PRは基本的にこの持っている技術の羅列になる。
そして、雇われた者は生産者となりその技術を消費者に提供する。市場において、消費者と生産者は技術と対価の交換関係に置かれる。
「作家で飯を食うのは容易な業ではないのである」
しかし消費者は不思議なもので、消費の傾向は気紛れであり、不確実でランダムである。
今日、その「役に立たない」はずの文学がまだ市場内で淘汰されきっていないのは、この気紛れな消費者に何かしらのインパクトを与えているということは否定できない。
しかし、生産者が「技術」を提供しているという前提に立つならば、消費者は文学作品になにかしらの「技術」を見出している。
文学作品に内在している「技術」は作品のどこに存在するのか?
自分はこの「技術」という概念が、今日ではまだ曖昧で抽象的な、ふわふわしたままで心にとどまったままである。
そもそも「役に立つとはなにか?」がよく分からない。
そして「技術」も曖昧な言葉である。
ソクラテス的に言えば「善くするもの」だとは言える。
では文学作品は何を善くするのか?
想像力?感受性?語彙力?集中力?
そうかもしれない。
しかし、集中力を高めたいからといって人は本を買うのだろうか?
想像力を高めたいからといって人は本を買うのだろうか?
そういうものは別に本だけの専売特許ではない。
そもそも「想像力」が善くなるとはどういうことか?
結局のところ、そんなことを突き詰めても終わりは見えない。
だから「なんとなく」でうまくいく、気まぐれの要素が大きいのである。
文学は本当のところ、逆説的に「役に立つ」かもしれないと自分は思わざるを得ないのは、このことによる点もある。
何を書きたいのか分からなくなってきた。この文章に方向性がないからである。気紛れで書いてしまった。
しかし矛盾は解消されないままである。
本当に芸術たらんと欲する者の作品は売れにくいという逆説である。
山城むつみ氏の文章を読むと、真に芸術的であるものは政治的に機能するらしい。
売れないけれども限りなく政治的なもの。
つまり、それは「公共的なもの」ということなのか?
真に公共的たる作品こそが文学である。
この命題について明日考えてみることにしたい。
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『アベル・サンチェス』
メモ
アベル「ありとあらゆる正統の根源は、宗教においても芸術においてもおなじことだが、間違いなく嫉妬なんだよ。」
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関連図書
福田恆存の本