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メモ
"ある教授が反論した。「一八三0年の貴重な成果を台なしにしてはいけません。われわれの勝ちえた自由を尊重しなければ」むしろ地方分権をはかり、都市の過剰利益を農村に分配すべきなのだ。「しかしその農村も腐敗しているではありませんか」とカトリック教徒が大声で主張した。「まずは宗教の復権をはたすことです。」マルチノンが即座に言いそえた。「おっしゃるとおりです、宗教はいい歯どめになりますからね」諸悪の根源は、より上位の階級にのしあがり、ぜいたくな暮らしを味わいたいという現代的欲望のうちにあるのだから。" P367-368 (『感情教育 上』)
感想
大江健三郎が長嶋有氏に「『感情教育』はいいですよ」と語っていたので読むことにした。
主人公の設定(パリにある法学部の大学生)や恋愛に溺れていく様子はフローベールの分身のように思えた。(フローベールの自伝的作品といわれる『十一月』には恋愛のことばかり書かれている)
だからこそ、これはフローベール自身による経験が投影されている。そして、語られる言葉のひとつひとつには、その経験が希釈されたかたちで浸透しているはずである。そう思いながら物語を前半を読んだ。
前半は物語が劇的に展開されていくような構成ではなかった。
そのため、内容はやや退屈かもしれないが、19世紀におけるフランスの生活感や政治的な状況はリアルに伝わる。どれだけ働いても一生貧困から抜け出せない人もいるといった、リアルな声もあった。
時おり宗教に関する発言も見受けられた。
哲学と文学と宗教は「崇高」という概念を共有している。
軽くフローベールに関する評論を読んでみたが、どうやらフローベールは愛と信仰のなかにあるこの「崇高」に着目していたそうである。
しかし前半の内容だけでは、主人公は(フレデリック)ただのヘタレ男というイメージしか残らなかった。
美しいだの、恋しいだのと言っているだけで具体的な行動には移らない。
前半はややむずむずする感じがした。
後半へとつづく。
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