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J・M・クッツェー『マイケル・K』岩波文庫 (2015) 読了

J・M・クッツェー『マイケル・K』岩波文庫 (2015)

つづきを読み終えた。

 

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感想

 

自分がマイケルの立場に立ったらどう行動するか、ということを考えながら最後まで読み進めた。

マイケルはキャンプを拒絶した。キャンプにいれば労働を課されるが命の危機に晒されることはない。にもかかわらずマイケルは逃亡がバレれば撃ち殺されるというリスクを負ってでも逃走した。

しかし自由になったとはいえ、次に襲ってくるのは暴力ではなく飢えであった。

ところどころ昆虫を食べる描写が見受けられた。そこまでして一人にこだわる理由は最後まで分からなかった。

 

 

自分であれば労働を選び、そこでできることをするしかないように思えた。

キャンプ内では人々との交流も少なからずあるようであり、地獄とまでは言えない。

戦争中とはいえ、平和が戻ればもしかすれば希望も持てる環境であったかもしれない。

それでも敢えて孤独へと突入したマイケルの心はマイケルにしか分からないと思った。

 

 

意外な描写は、マイケルが飢えで苦しんでいるとき、病気で苦しんでいるときに人々がマイケルを助けた点であった。

キャンプへと送られることになってしまったが、何回もマイケルは助けられた。

どんな理由であったにせよ、素性の知らない他人であっても倒れている人を見つければすぐに助けるという、当たり前のことを戦争中の心に余裕が持てないときにそれができるというのは端的に素晴らしいと思った。

 

 

・・・

 

真の自由は一人で到達し得るか。

最後まで読んでも、どうしてもそうは思えなかった。

孤独を受け入れることは大事だ。

しかし孤独ではできないことがあまりにも多すぎはしないだろうか。

 

 

能力主義を擁護する人間は、実は生まれながらに環境に恵まれている人が多いように自分は思っている。

困っている人がいたら無条件に助けるべきかどうか。外国に手を差しのべるかどうか。

誰にどの程度富を分配すべきか。

 

 

アフリカのことを考えるとロールズの正義論やサンデルのコミュニタリアニズムに思いが及ぶ。

何を最上級の価値とすべきか。富か。自由か。時間か。

こういう小説を読むと少しヒントになるように感じた。

 

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