こちらのつづき
前回をざっくりまとめると、
「平等の参加」が前提となる議論において、社会的コンフリクト(争い)が発生する原因を特定するための基準として、変数をしっかりと見定めることが重要だと述べた。
変数は多様であり、社会福祉へのアクセス権や、クレジットカードを持つ権利など、個人の所有権や富の配分法に至るまで、多岐にわたる。
それらの変数に対し、「承認」と「再配分」を「同時に」達成させるためには、改善案を「肯定的是正」と「脱構築論的アプローチ」の2観点から絞り出すことが大事だとフレイザーは考えた。
また、肯定的是正のように、制度を壊さない仕方で解決する方法を、フレイザーは「非改革主義的改革」と呼んだ。
フレイザーは、この2つのアプローチは長期的には「社会的コンフリクト」の文法に依存するとみた。
このことを、肯定的是正戦略と、脱構築戦略のラディカル(急進的)な推進力が組合わさることで非改革主義の改革の可能性が生まれる
と表現した。
今回の記事でフレイザーの主張がひとまず完結する。
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フレイザーの主張は記事にまとめてきたので、最後の部分を簡潔にまとめたい。
最初の記事のほうで、昔と今の経済状況と配分に関するお話をした。
今は経済状況と社会的地位付けには、昔とは違い直接的な関係は薄くなっていると書いた。
フレイザーは3つの段階モデルを提唱する。
・ポストフォード主義
・ポスト共産主義
・グローバリゼーション
フレイザーによれば、時代とともに、段階的にグロバリゼーションへ向かっていくと同時に、社会運動は再配分⇒承認への要求へと重心を移していったとみる。
再配分だけで承認が達成された時代がかつてはあり、現代ではそうならなくなっている。
それは段階的に3つの社会状況が変わっていったことと重なるとフレイザーは述べる。
フレイザーは「資本主義が階級を社会的地位から分離した」と表現する。
経済状況と社会的地位付けがそれぞれどう作用していくのかが、時代とともに値も変わるということであると考えられる。
その値は「変数」として基準付けをし、「平等な参加」を前提とした「議論」の交換によって、「改善案」をあぶり出していく。
最後まで一貫しているのは、問題を解決するには、フレイザーは「承認」と「再配分」を同時に、統合的に達成するための立案であること、このことに尽きると考えられる。
以上まででフレイザーの主張の要約とする。
次回はホネットの反論に入る。
つづく