香山リカ『しがみつかない生き方:「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』幻冬舎新書(2009年)を読む。
個人的に最近、斎藤環氏をはじめ、精神科医の書いた本をよく読んでいる。
病んでいる人向けの本かと思ってしまう方がいるかもしれないが、精神科医の仕事の大半は診療で、その現場で様々な社会人と向き合っているという側面から、社会の実態を本に投影しているという見方もできると私は考えている。
まずは100ページほど読み進める。
著者は経済学者や社会学者ではないので、正確に時代の流れを掴めているかは疑問ではあるが、やはり現場で疲れきったビジネスパーソンを多く見ていることから、学者とは違った視点を提供してくれる。
著者によれば、日本は「アメリカ化」によって雇用環境がめちゃめちゃになり、その結果として20代~30代の精神疾患に罹患する人が増えていると指摘する。
また、人々の「繋がり」が希薄になっているとも指摘する。
今の時代、失業し、貯金が崩れてしまうとすぐに「路上生活」になるリスクが高い。
昭和の時代を知らない私には想像がつかないが、香山氏によれば、「ツケ払い」やまわりの支援等、今NPOがやっているような活動が各々の地域で機能していたという。
個人的には、おそらく高度経済成長の最中においては、一億総中流ということで、人々には余裕があり人情があり、利他心に溢れていたと推察される。
この「人情」と経済的豊かさとどう相関しているかは素人なのであくまで推察ということにとどめたい。
今日、電車のホームであることに気がついた。
駆け込み乗車が何故発生するのか。
それは前提として、電車が「時間通り」に来ることがあるのではないだろうか。
要するに、それを逃すことによって「あと5分待つ」ということを暗に理解している。
ヨーロッパのように、遅れてくることが当たり前であればおそらく駆け込み乗車は発生しにくい。
そして、駅員は電車を遅れさせないという義務感からうるさいアナウンスを繰り返す。
外国から帰ってきた日本人が「電車がとにかくうるさい」と感じるのはそのためではないかと思った。
かけこまないといられない状況、それを阻止しないといけない状況。
精神的につかれるだけではないだろうか。無駄で非生産的な文化。
日本には余裕がないということを駅でも感じさせられる。
つづく