アシュリー・ミアーズ『VIP グローバル・サーキットの社会学』みすず書房(2022年)を読む。
男と女をめぐる物語がみすず書房から出ていることにギャップを感じ、興味を持つ。
社会学のアプローチから富裕層の現場を研究した一風変わった本である。
端的に感じたことは、市場の原理は排他的で倫理に欠ける。勿論、それが現実であり、需要と供給があるから成り立っているのであり、何の違法性もないことは理解している。
本書は女性の社会学者がフィールドワークとして、実際に現場に潜入する。
著者はパーティの運営に携わる「プロモーター」と共に行動する。
プロモーターも仕事である以上、シビアな世界である。
ディカプリオ主演の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年) を彷彿させる富裕層の男性たちはモデルクラスの女性にしか興味がない。
失敗は許されない。
プロモーターも必死だ。パーティにどれだけ魅力的な女性を呼べるかにかかっている。
女性の参加者は学生か、金融業界で働きたい既卒の人である場合が多いとのことである。
女性はコネを求め、男性は美を求める。
この両者の直線が交じり合い、その交点が「VIPルーム」となる。
テーブルの配置や席数など、会場設計は経営上重要な要素となる。
このバチバチした欲望の絡み合いは、読んでいてなんともいえない気分になった。
読み物としては面白い。
つづく