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読書日記192

ラトン『国家 (上) 』岩波文庫を読む。

「不正な人間は正しい人間に勝る」

という命題をめぐりトラシュマコスとソクラテスは議論をかわす。

 

 

ソクラテスはひとつひとつ丁寧に言葉の意味と性質を調べあげていく。

知恵のある人間の性質は、正しいことを行う人間の性質と類似性があることが見えてくる。

明らかに正しいと思われる行為に対してそれを妨害することは「正しい」とは言えない。それは「知恵がない」人間が行う行為である。

 

 

医師が医師の知恵を持ってその技術を患者に使用する。医師がもう一人隣にいたとして、知恵を持って技術を使用する医師が正しい仕方で行っていればわざわざもう一人の医師は口出ししない。意味がない。

 

 

不正な人間は明らかに正しいと思われる行為をしている人に妨害する。

今の医師の例に当てはめれば、それはやはり「知恵がない」人間が行う行為になる。

故に、不正な人間は「無知」であることが示された。

 

 

知恵のない人が、知恵がある人に勝る道理はない。

将棋で考えれば自明。

知恵のない人は知恵がある人に勝てない。

 

 

かくして不正な人間は絶対に正しい人間には勝てない。

なるほど。

腹落ちした。

 

 

ある言明が正しいかどうかは、まずその性質を調べあげなければならないことが分かった。

 

 

つづく