田中慎弥『孤独論』徳間書店(2017年)と、
バーナード・レジンスター『生の肯定:ニーチェによるニヒリズムの克服』法政大学出版局 (2020年) を読む。
田中氏は語る。
読んでいくと、編集者と折り合いをつけていく際の苦悩が伝わる。
芥川賞受賞作家といえど、オーダー通りに書かなければいけない時がある。
田中氏によれば、断るときはしっかりと断る。書くときは書く。
というのも、イエスマンでいることによって作家本来の能力が損なわれてしまうリスクがあるというのである。
小説も商業として成り立っている以上、避けられない道である。
ただ、本書もやはり編集者によってある程度「操作」されているものを個人的には感じる。
「あの田中氏がこんなこと言うのか?」
と思う部分もある。
本書を読むことで、本そのものを俯瞰的に見てみることの大切さを教えてくれる。
ニーチェといえばニヒリズムで有名だが、膨大な著書を出している。
内容はどれも複雑で、多様だ。
それもそのはず、本書によればニーチェ自身は自分を理解できる人間がいることに対しても懐疑的だったかもしれないというからである。
ニーチェは自身の哲学を体系化していない。
バラバラな断章が束になっている。
だからこそこのようなニーチェ解釈の本が数多に存在している。
『ニヒリズムとテクノロジー』という本が最近出ていたが、私としてはこちらの本が気になった。
つづく