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感想
この映画の感想を書かずにはいられない。
Twitterのフォロワーさんからお勧めしていただき、今日全て観終わった。
まず、簡単なあらすじを書き残したい。
自分は登場人物の名前をほぼ覚えていないので、主人公(画像真ん中の男性)をA氏と呼ぶ。
A氏はインドの強壮剤を販売するお店の店主であった。
A氏の親は病に倒れる。
A氏のお店の経営は赤字で、テナントは退去寸前であった。
そのため、A氏は親の医療費をまともに払えず、絶体絶命であった。
・・・
そのとき、インドでは白血病患者を治すスイス製品のジェネリック薬品が販売されていた。しかし中国では認可されておらず、それを輸入することはできなかった。
また、映画の舞台となる上海では、その薬「グリニック」は高価で、貧困層には手が届かない値段であった。
そのため、薬を買えない患者は死を待つしかなかった。
そうしたなか、A氏は白血病患者とグリニックをめぐる一連の話を聞かされ、一時は犯罪には手を染めないと考えていたが、どうしようもなく、密輸することで父親を救うしかないと考えるに至った。
A氏はインドへ行き、ジェネリック薬品を販売するインドのとある会社の社長と交渉した。
卸値で販売するには代理店契約を交わさなければならなかった。
交渉の結果、1ヶ月以内に販路を開拓することができるならば、契約を結ぶと社長は語った。
A氏は上海に戻り、結果的に販路を開拓することができた。
利益も上がり、白血病患者に対して安価で薬を提供することができ、父親の医療費も捻出可能となった。
A氏は白血病患者である当事者を雇い、仲間も増え、経営は軌道に乗る。しかし捜査が見逃すはずもなく、A氏はピンチに陥る。終盤で劇的に物語は展開する。
・・・
論点はいくつかあるが、多方面にわたって論じる気力がないので、今日は法律と正義だけに絞って感想を書きたい。
結果的に法外な薬価が見直されることとなった。
しかし、そのために払う犠牲はあまりに大きすぎた。
法律とはいったい何のためにあるのか。
自分は問いかけたい。
この物語は、ある意味では「命のヴィザ」の物語と似ている。
とある若手の刑事は、この不条理な現状を目の当たりにし、A氏の行為を理解し、目をつむった。しかし処分をくらう。
面従腹背という言葉がある。
イマニュエル・カントは、批判は公的には許されず、あくまで私的な領域でせよ、と述べた。
警察に従事する覚悟を持った以上、やはり刑事は仕事に私的な感情を持ち出したという点では処分を受けてしかるべきである。
警察が悪かったとは全く思わない。その点で、自分はカントの義務論を支持する。
正義とはなにか?
「本当の病は貧困だ」といった言葉が非常に印象的であった。
自分はそうは思えない。
病は貧困にあるとは到底思えない。
だからといって、法律に病が潜んでいるとも思えない。
正義とはなにか?
この問いは無意味にすら思える。
そうではない。
この問題の根本には何が隠れていたか。
その追求に意味がある。
法律は常に改良され続ける。
しかし時に悪化もする。
法律もまた、人間の身体に似ている。
ヒトラーのような政権に乗っ取られるときもある。つまり、法律もウイルスにつねにさらされている。
自己免疫力。
こういったものが法律にも求められている。
ではその免疫細胞となるものはなにか?
そこを考えるべきだ。
この映画にはあらゆる問いかけが含まれているように自分は感じた。
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