はてなブログ大学文学部

読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1178

読んだ本

リチャード・ドーキンス『魂に息づく科学:ドーキンスの反ポピュリズム宣言』早川書房 (2018)

池田晶子『無敵のソクラテス』新潮社 (2010)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

日記

 

リチャード・ドーキンス氏と池田晶子の対比は面白い。

前者は科学至上主義者であり、後者は科学の万能性に疑問を呈する哲学者である。

 

 

水と油が混じらないのは水のなかに油を入れるか、油のなかに水を入れることによって初めて判明するように、ドーキンスの思想に池田晶子の思想を入れるか、池田晶子の思想にドーキンス氏の思想を入れることによって両者がどう反応を示すか分かる。

時には想いもよらない化学反応が起こることもある。それがゲシュタルトというものだと自分は思う。

 

 

ドーキンス氏の本の46ページの文章をメモした。

"根本的な善悪の価値観を科学的知識からは引き出せないという考えについて、このあとすぐに確認していくつもりです。しかし、絶対的な道徳的価値観があると信じない功利主義倫理学者が、そう言いながらも特定の価値体系における矛盾と不一致を暴くことが自らの役割であると、ごもっともな主張をします。そして絶対主義者が人間の権利をほかのあらゆる種の権利より持ち上げることの矛盾に気づく、絶好の立場にあるのが進化学者であります。" P46-47

 

 

ドーキンス氏は中絶反対論者に対して「でもあなただって動物の肉を食べるでしょ?」と語り、バイアスについて指摘した。

ドーキンス氏は自分と同じように、動物の意識をグラデーションとして考えている点は共感できる。

この理屈であれば中絶反対論者はたしかに偏った考えを持っている。

人間のエゴと倫理を問う問題は難しいものである。

 

 

本書を池田晶子の本と対比させるといろいろなことを考えさせられる。

相乗効果という言葉があるように、100と100の情報量を持っている本が足して200になるのではなく、掛け合わせって1万になるイメージを抱いた。

 

 

進化論は倫理学の先導者となれるのか?

自分はまだハッキリそうは思えない。適応者生存の原理は暴力を許容する。

基本的に自然淘汰という世界は暴力によって成り立っている。

また、カントの道徳観と対比させるのも面白い。

『善と悪のパラドックス』の内容と併せて見るのも相乗効果になる。

 

 

進化論は人間が勝手に解釈する節があるので、ドーキンス氏がどのような論理を持っているか見所である。

暴力と道徳をどう結びつけてドーキンス氏は語るのだろうか、というのがまず本書を楽しむための一点目の材料である。

 

 

ドーキンス氏の本はまだ序章だが、池田晶子に敬重している分、反論の材料が多くある。

多くある分、考えることも増える。これは素晴らしいことだ。

まだ50ページしか読めていないが、明らかにドーキンス氏は哲学に対してなんらかの軽蔑的な態度を見せている。

 

 

ドーキンス氏vs池田晶子というふうに勝手に決めてしまったがつづきが楽しみである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

関連図書

 

 

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

nainaiteiyan.hatenablog.com