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読書日記426

井裕美『キュビスム芸術史』名古屋大学出版会 (2019年) を読む。

幾何学と芸術の融合。

中には歪な絵もあるが、素人ながらも、単純にキュビスム絵画には数学的な美しさを感じる。

 

 

また、抽象とは何かという哲学的な問いを与えてくれる。

抽象的、とは「一般的な概念をとらえるさま」と書いてある。

何かを抽象的に語る場合、そこには一般化されるべき対象がある。

 

 

裏を返せば、抽象は一般を必要とする。

一般とは「広く認められること」と書かれている。

つまり、広く認められる属性を抜き出すことが抽象である。

抽出という言葉と似ている。

取り出すことが抽出で、それを表象することが抽象なのだろう。

 

 

 

では、「芸術は抽象でなければならない」と考えたキュビスム芸術家はどのような考えを持っていたのだろうか。

辞書の意味から引っ張りだせば、それは、何か共通する属性を有限的な範囲 (絵という、四角い小さな領域内) で凝縮、表現することだ。

 

 

従って鑑賞する側は何が凝縮されているのか、その属性を見極める力が求められると考えられる。

普通に考えれば抽象とはそれ以上でもそれ以下でもない。

「芸術=抽象」と考えるのは、芸術を有限にしてしまわないだろうか。

属性というものが無限にあるとは思えない。

芸術は抽象を超えなければ意味がないように見えるのだが。

 

 

以上、キュビスムについての導入のまとめとしたい。

 

 

つづく