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読書日記262

代健彦『「生存競争」教育への反抗』集英社新書 (2020年) を読む。

端的に言えば、「教育には限界があるので、日本を変えるには教育だ、と安易に言わないで」ということを訴えている本である。

格差や日本の政策についていろいろと考えさせられる本である。

 

 

1月に読んだ『格差という虚構』(ちくま新書) では、著者はまず環境と遺伝が分離不可能であることを強調した。

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また、オランダ人と日本人の平均身長が10cm違うというマクロ的なデータにおいては、遺伝で説明がつく。しかしミクロにおいては実証実験の構造上、環境と遺伝は分離不可能である。にもかかわらず個人にも置き換えたときに、遺伝子決定論者は環境よりも遺伝によって優劣が決まることを正当化している、と著者は批判した。

 

 

格差の何が問題なのか?という問いは大事であるように思える。

大卒者と高卒者の生涯年収はデータから、違いがあることはハッキリしている。

ただ、それだけのデータを見て「格差は問題だ」と言うことは、「人生の豊かさはお金の多寡で決まる」と言うことに等しいのではないだろうか。

 

 

本書では「教育のコストは高くつく」と述べられている。

子供に期待することは、同時に不安をも背負う。

本書を読むと「厳格」かつ「のびのび」と子育てすることの困難さが伝わってくる。

 

 

 

国家単位で考えれば、教育は間違いなく大事だ。

ただ、個人単位で考えれば、場合によっては子供に大きな負担をかけさせることをも意味する。

個人的に感じるのは、そろそろ日本は知識偏向の受験制度を改善させるべきではないだろうか。

今優秀な人材に求められるであろう「問題解決能力」は、いわゆる「非認知能力」が必要とされるだろう。

考えることは多い。

 

 

つづく