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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1059

読んだ本

ジェレミーベンサム『道徳および立法の諸原理の序説 上』ちくま学芸文庫 (2022)

宮台真司『崩壊を加速させよ:「社会」が沈んで「世界」が浮上する映画批評2011→2020』blueprint (2021)

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日記

 

書店に行くとLGBTQ関連の本に加え、「ケア」に関する本も増えているように感じる。

・小川公代『ケアの倫理とエンパワメント』講談社 (2021)

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

・小川公代『ケアする惑星』講談社 (2023)

・満薗勇『消費者をケアする女性たち: 「ヒーブ」たちと「女らしさ」の戦後史』青土社 (2022)
など、2020年代はいくつか出版されている。他にもおそらく多くある。
 
 
おそらく共同体というものの力が、今後の超高齢化社会に必要となるのは間違いないが、これは高齢化の問題だけでなく、宮台氏からすれば国全体の問題として意識されるべき問題である。
 
 
アダム・スミスの「見えざる手」は各人に道徳心が備わっていることが前提となっている。また、ルソーは「ピティエ」という、ざっくりいえば想像力、良心のようなものが無ければ民主主義は機能しないと『社会契約論』で述べたと宮台氏は説明し、近代以後は合理化(≒手続主義化)によって人々がシステムに依存するようになり、社会の成員の情が劣化し、「没人格化」した社会を「クソ社会」と宮台氏はマックス・ウェーバーの研究から分析している。
また、この手続主義は役所を越えて広がり、学校や病院、会社でさえも手続主義化すると宮台氏は述べる。
そして最終的には手続主義の「外」が消えるとウェーバーは分析した。それは「鉄の檻」と呼ばれる。
 
 
没人格化とは宮台用語でいう「言葉の自動機械・法の奴隷・損得マシーン」の人間たちによって構成される社会である。これは「鉄の檻」によるものだとされる。
 
 
自分は「言葉の自動機械」についてはまだ理解できていないが、それ以外の二つは少しずつ理解できるようになってきたと思っている。
おそらく「言葉の自動機械」は、巷で流行っている言葉の意味を深く理解せず、とくに考えないで「ノリ」で使っている人のことを指すのだろう。(「バイブス」など)
 
 
それは一旦おいて、なぜ「ケア」なのか。それはいうまでもなく、「システムに乗っかってれば大丈夫」であり「法を守っていれば大丈夫」という発想(=法の奴隷、損得マシーン)においては「他者へのまなざし」あるいは「他者への共感」が軽視され、なんでも合理的、知性的(論理的でかつ無機的)に解決しようとする。
 
 
これは『みんな政治でバカになる』や『反共感論』において拝見されるように、政治をなんでも理性的、知性的に良い方向へと持っていこうとする男性社会的な発想が社会の根底にあると自分は考える。
だがその発想は巨視的に捉えるとルソーやアダム・スミス的には「ノー」なのだろう。
非常に難しい問題だ。
 
 
『崩壊を加速させよ』を再読することによってより以前の読書体験が内在化され、新しい視点を得ることができたように思う。
再読の重要性については『再読だけが創造的な読書術である』に書かれている。
 
自分は今回、『崩壊を加速させよ』の初見で見逃した点を確認することができた。
普通、ここまで読んで頂いた方は手続化(広義の意味では官僚制化)の何が問題なのか、それの何がいけないのかと疑問に思う。
 
 
では、想像力の欠ける社会に問題は生まれないのだろうか。
想像力を行使せずに、自由きままに「競争の自由」という名分のもと、「合法=法内」であれば何をやってもいいのだろうか。という問いがまず生まれる。
また、想像力の欠如は「ヘイトスピーチ」やネット上の「中傷」に繋がる。
 
 
間接的な影響として自分は個人書店、小型・中型書店の閉店にみてとる。
 
 
それのどこがいけないのか。
突き詰められればまた長い文章を書かなければならないが、それは今後の日記でいろいろと返答をしていきたい。
今日の社会問題はある程度この「鉄の檻」に還元されると自分はみている。
 
・・・
 
 
ひとつは、手続主義の問題点に「マニュアル」的な問題点と言語上の問題点がある。
社会学では、構築主義というものが近年批判に晒されているようである。この構築主義から派生する問題についてはだいぶ抽象的な話になりかねないが、ざっくりいえばマニュアル化の問題点は、言語で構築されたもの(文章など)が「虚構」であると信じ込み、それが「現実」から切り離された時に起こる諸問題にある。
(言語の意味と指示対象との剥離、つまり「シニフィエシニフィアン」の問題とポスト構造主義の問題がここで連結する。)
これについて書いていくとそれこそ1万文字になるので明日以降具体的に書いていきたい。
 
 
一枚目の『道徳および立法の諸原理序説 上』は、個人的な趣味の範囲でこの問題を考えるときにベンサムの本が参考になると思い、読んでみた次第である。
 
 
1時間かけてここまで書いたが、キリがないので次回以降に具体的に書きたい。
つづく
 
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