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読書日記1021

読んだ本

小川公代/吉野由利『感受性とジェンダー:<共感>の文化と近現代ヨーロッパ』水声社 (2023)

仲正昌樹『精神論ぬきの保守主義』新潮選書 (2014)

薬師院仁志/薬師院はるみ『公共図書館が消滅する日』牧野出版 (2020)

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日記

 

仲正氏の本と薬師院氏の本はまだ要約しきれる段階にはないため『感受性とジェンダー化』の感想を書きたい。

 

・・・

 

本書にも書かれているように、「共感」を道徳と結びつけた本は近年多く出版されている。

 

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以上の3冊は共感の負の側面について、主に政治的な観点から論じられていた。

それぞれの本の内容は記事にまとめたので割愛。

正義に関する論争はいつまでも平行線をたどってる(ように見える)のは、そもそもこの「共感」という感情が持つ二面性によるのではないかと思われた。

つまり「正義」でありながらも「悪」でもあるという、矛盾をこの「共感」は内包している。

この点について、詳しくは以上の3冊によく書かれていたと記憶している。

 

 

ざっくりとまとめるならば、この「共感」がネット空間のなかで「サイバー・カスケード」になり世論が過激化、二分化するというものである。

サイバー・カスケードとは、味方同士がくっついていくことによって意見が強化、偏向していくことを指すとされる。

 

 

・・・

 

本書を読んで非常に勉強になった点がひとつあった。

正義を突き詰めて考える能力よりも、我慢して他者の意見に耳を傾ける能力のほうが重要なのではないかと思わされたことである。

 

 

"発達心理学者のローレンス・コールバーグが擁護していた「正義の倫理」は、客観的な不公正を是正することができるかどうか、あるいは人と人が結合するとき、諸権利の優先順位を決めることができるかどうかが基準であったが、ギリガン、ジョアン・C・トロントらは、正義が何かを決定する能力よりも、他人のニーズにどう応答できるかを問う、他者の「声」に傾聴する態度を持つ、関係性に根ざした自己こそ"成熟"していると考えた。" P23 (『感受性とジェンダー』)

 

 

自分はこれを読む前から少し考えていたことがある。

学問は客観性ありきで成り立っている以上、主観性の問題(心の問題、政治の問題など)を客観で成り立っている体系で解決し得るだろうか、と。

実際そうは見えない。

とくに精神医療の分野では実証主義に傾いており、精神分析はかろうじて機能しているが心理療法の限界、薬物療法の限界を感じる時があった。

これはまさに主観性の問題を客観的にしか切り込めない学問の限界でもあるように思えた。

とはいえこれは客観性の重要さを軽視、否定するものではない。あくまでも客観性にこだわりすぎることへの批判である。

 

 

本書は主観性の問題を解きほぐすヒントを与えてくれる。

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関連図書

 

 

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