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読書日記387

代亨『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』イースト・プレス (2020年) を読む。

1975年生まれの精神科医による、時代の診断書である。

 

 

本書は精神医学、心理学、思想、哲学等、様々な領域に繋がる興味深い内容となっている。

例えば、近年は大型商業施設において迷子のお知らせが減ってきていると著者は感じている。

これは正確なデータは無いにせよ、妥当な意見だと思われる。というのも、私が10代であった約15年くらい前、2000年代前半は確かに迷子のお知らせは耳にしていた。

 

 

親の過保護なのか。それとも、子供がより「従順」になってしまったのか。

過保護は言いすぎかもしれない。しかしながら肯定も否定もしにくい。

というのも、やはり著者が述べるように近年「発達障がい」が激増している。

福祉のサポートを必要とする子供が増えているのである。であれば「過保護」ではなくむしろ「保護」である。

後者は、遺伝子学や生物学が明かしつつある「自己家畜化」で説明がある程度つくだろう。

 

 

最近の公園は、昔と比べるともはや「異常」だと思われる。

公園でボール遊びの禁止の看板が目立つ。

あれも禁止、これも禁止。

法律や刑罰が近代以降の人間たちを縛り、大局的には殺人が減りつつある。

であるならば、規則の乱立が子供を大人しくさせ、ルールをしっかり守りふらふらと親から離れずに、しっかりと親のそばにいるよう意識が内面化されているかもしれない。

 

 

いろいろと考えさせられる本である。

 

つづく