本書の存在はだいぶ前から知っていたものの、解説書を読んで分かった気になっている自分に嫌気がさして読んでみることにした。
第一章は合理性と現実との絡み合いについて論じられている。
デカルト以後、近代ヨーロッパは科学的知見から神話を破壊した。
その後、技術が発展し産業革命を経てファシズムを生んでしまう。
合理性から始まった近代が、非合理的であるファシズムを生んでしまう結果となった。
この「退化」の過程を解き明かす内容となっている。
例えば、コロナ禍では過剰に健康を優先する「健康ファシズム」ともみなせるような状況が生まれた。
現在も上海において人権問題を考えさせられる都市封鎖が展開されている。
「自粛警察」も「健康ファシズム」の様相を呈しているようにみえる。
科学と倫理に関わる問題でもある。
人命を尊重しつつも、そうとも言えないような逆説的現象が生まれつつある。
私は、歴史は繰り返すという普遍的真実を頭の片隅に置きながら本書を読んでいる。
本書を読むことは決して時代遅れとは言えない。
人間の深層心理に迫る、興味深い一冊であると感じている。
つづく