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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1326

読んだ本

シュテファン・ツヴァイク昨日の世界 Ⅱ』みすず書房 (1999)

佐藤貴彦『男女平等は男女を幸福にしない』Parede Books (2024)

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日記

 

『男女平等は男女を幸福にしない』

100ページくらい読んだあとに最後までパラパラと眺めた。

徹底的なフェミニスト批判の本であった。

部分的に、とある作家と似たようなことを書いている。

 

 

どちらが正しいことを書いているのかも、正直なところ分からない。

真実は全て、自分の目で見て、自分で考え、自分で調べて判断するしかない。

データというものは「事実」という名前が一人歩きすることもあり、扱いには注意しなければならない。

都合の良いデータのみを引っ張りだしたり、そもそもデータの取り方や、調査方法に問題があったりする。

「どんなこともすぐに判断は下さず、保留する」

 

昨日、『生きるということ モンテーニュとの対話』に書いてあったことをすぐに思い出した。

 

(読書日記1325に収録)

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

 

 

揚げ足取りは道徳的にあまり良くないと直感的に思われるので、本書から何を引き出せるのか、そういうことを中立的に、客観的に、そして建設的に考えたい。

 

・・・

 

上野千鶴子氏は、結婚の定義を以下としている。(本書によれば『限界から始まる』に書かれているとのこと)

"「結婚とは、自分の身体の性的使用権を、特定の唯一の異性に、生涯にわたって排他的に譲渡する契約のこと」" P79

 

同姓婚が話題の今、彼らが何故結婚をしたいのか、著者はそのことを調べ、以下の理由を挙げた。

 

・パートナーと実子または養子の共同親権を持てる

・パートナーに、命にかかわる問題があったとき「家族」として側にいられる。いる権利を持てる

・パートナーに緊急事態があったとき、医療行為についての同意書にサインが可能となる

・パートナーが外国人の場合、配偶者ビザを申請できる

・パートナーと死別、離別した場合に財産の相続、または分与の請求が可能となる

・税の優遇措置や社会保証が得られる

 

これらを鑑みると、結婚の意味は人それぞれ多様にあるということが分かる。

 

 

自分は上野氏の考えはずれてはいないと思うし、著者の主張にも賛成できる。

論理的にはどちらも正しいと思われた。

あとは主観的な問題なのだと思われる。

 

・・・

 

フェミニズムの原点は「不平等」にあったと思われる。

その不平等が「不正」であれば正さなければならない。しかし明らかに「不正」ではないものに対しては「正されるべきである」とは言えない。

前者は就労の問題、就学の問題などが挙げられる。

後者はスポーツに顕著だと思われる。

筋肉量は科学的に男性のほうが女性よりも相対的に多い。これを無視して陸上を男女混合にして「平等」にするのはおかしい。

 

 

つまり、建設的な考えを進めていくためには「何の不正か」を問わなければならない。

一昨日『分析フェミニズム基本論文集』で「性的モノ化」についていろいろと読んだが、そこに何の不正があっだろうか。

と、帰り道に考えてみたのであるが、「性的モノ化」によって女性に「不当( ≒ 不正)」に「不快を与える」ことがあれば、やはりそれは正さなければならない、と考えることは可能だと思われた。

 

 

広告でそれが顕著である。

キャラクターの描写が「性的モノ化」を連想させ、不当に不快な思いをさせる。

という理屈になっていくと自分には思われた。

セクハラ問題もこの文脈を分かちもつ。

単に「主観の問題だ」と片付けることはできない。

 

 

自分は「資本主義のなかでは男性も会社の道具になっているではないか」と思ったが、それによって不当に「不快な経験」というものを感じただろうか、と考えた時に、不快かどうかの線引きが難しいと感じた。

そもそも、不快な思いをプラスに昇華できさえもするので、一概にああだこうだと言えない。

 

いろいろと考えさせられた。

本書はフロイトジャック・ラカン、レヴィストロースらの知見と照らし合わせながら、アカデミックに展開されている部分もあるのでなかなか読みごたえがある。

 

・・・

 

昨日の世界 Ⅱ』

さきに後編が届いてしまったのでこちらを読んだ。

ツヴァイクの人柄が伝わる一冊だ。

戦争時、報道記者として戦場に行くことを依頼されたが断った件について書かれていた。

何を書かされるのかはツヴァイクには分かっていた。

 

"ーーけっして戦争を肯定させたり、他国民を貶しめたりするような言葉を書くまい、と。" P367

 

また、『ジャン・クリストフ』で有名のロマン・ロランの写真がとても格好よかった。

ロマン・ロラン

 

本書を通じてロマン・ロランの人柄も少し伝わった。

20世紀、野蛮を極めた時代にツヴァイクロマン・ロランのような人間も少なからずいたという事実は、『ホモ・デウス』で見られたようなゾッとする未来像へのアンチテーゼになり得る。

 

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関連図書

 

 

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