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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1162

読んだ本

片上平二郎『アドルノという「社会学者」ー社会の分光と錯乱する思考ー』晃洋書房 (2018)

マイケル・サンデル『実力も運のうち 能力主義は正義か?』ハヤカワ文庫 (2023)

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日記

 

『実力も運のうち』は330ページ弱まで読み進んだ。明日には最後まで読み終わるので、明日は考えたこと、感じたことなどを一気に書き上げたい。今日は金曜日ということもありさすがに疲れてしまった。

少し感想を書いて明日に備えたい。

 

 

ひとつ分かったのは、アメリカは日本以上に学歴で収入が決まるという事実であった。

そして日本と同様に、親の平均収入が高ければ高いほど一流の大学に入学する確率が高まるという統計的事実があるということであった。

今では親の収入を超えることでさえも難しくなっているのがアメリカにも起きていることであった。

 

 

 

まずひとつの原因としては、教育産業がそれに荷担していることである。教育に投資することでSATなどの点数が上がり、結果的に一流大学に入りやすくなるという構図は日本とあまり変わらないように見える。

優秀な学生は高校2年生、早いひとは1年生の間に高校の内容を全て終わらせ、いっきにギアを上げて入試対策へと移行する。そんな人たちと普通の公立高校の学生がまともに戦えるはずはない。

かくして階級は再生産され、蛙の子は蛙式にいつまでたっても格差はなくならない、というのが2020年代の状況ではないだろうか。

親ガチャという言葉は大学受験の観点から見れば必然的に生まれた言葉と言える。

 

 

そのような社会的な状況のなかで正義とはなにかをサンデル氏はさぐっていく。

後半も読みごたえがあり、1000円ちょっとで読める本としては素晴らしい本だと感じた。

 

 

親ガチャは運の問題である。ならば運というものを考慮して、せめて機会の平等だけは保証するべきだという「運の平等主義者」について語られた。

しかしサンデル氏がいうには、機会が平等でも個々のどんな才能が報酬と結び付くのかは運でしかない。運の平等主義者は機会の平等は与えるがそのあとの責任は本人が負うべきだと主張する。それではナンセンスではないか、という考察が300ページあたりで進む。

 

 

つまり、運と結果というものは何十も重なっており、その集合体としての「結果」に対する責任の拠り所はぼかされてしまう。

結果を解体し、どこに本人の責任が問われるのか定めるのはおよそ不可能である。

どこまでを本人の責任とすべきなのか。境界線の設定は非常に困難な作業となる。

 

・・・

 

256ページに面白いことが書いてあったので書き残したい。

フランク・ナイトという新古典派経済学創始者とされる人物が主張した、道徳と報酬の関係について以下のように書かれていた。

 

"金儲けがうまいことは、功績の尺度でもなければ貢献の価値の尺度でもない。すべての成功者が本当に言えるのは次のことだ。類いまれな天分や狡猾さ、タイミングや才能、幸運、勇気、断固たる決意といったものの不可思議な絡まり合いを通じて、いかなるときも消費者の需要を形づくる欲求や願望の寄せ集めにーーそれがいかに深刻なものであれ馬鹿げたものであれーーどうにかして効率的に答えてきた、と。その価値は、一つひとつの事例ごとに、需要を満たすことでかなえられる目的の道徳的地位によって決まるのである。" P256

 

・・・

 

今日まとめちゃんねる経由で、Uber Eatsの配達員をバカにしているtweetが目に入った。

僕と君とはやってきたことが違うから君はタワマンになんか絶対に住めない、というような内容であった。

 

 

その人物のtweetを見ていると、常に攻撃的で誰かを侮辱しているものも少なくなかった。

何について怒りを感じているのか。

これだけの侮辱的な文章を、いったい何が彼に書かさせたのか。

こんなことを考えるのも暇人でしかないが、そのうち彼が大金を持っているかどうかで人間の発言の正しさが決まるという考えを持っているのではないかという推察を立てた。

 

 

タワマン人間は命題の正しさを現実から投影させて判断するが、哲学者は命題の正しさを言語から投影させて判断するものだ。

この二項対立的な形式に面白さを感じた。

 

 

政治哲学者はもちろん後者に染まっているので、前者の論理もある程度重要なのかもしれない。リバタリアンは前者に少し染まっているかもしれない。

認識のパターンというものは複数存在することを思わせられるtweetだ。

サンデル氏の意見を、タワマン人間の理屈と照らし合わせながら読むとまた違ったように見えるかもしれない。

 

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