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読書日記1158

読んだ本

マーク・フィッシャー『わが人生の幽霊たちーーうつ病、憑在論、失われた未来』ele-king books (2019)

J・M・クッツェー『鉄の時代』河出文庫 (2020)

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日記

 

デジタルによって「失われるということが失われる」ということをマーク・フィッシャーが書いていた。そこが非常に印象的であった。もちろん良い面もあるだろう。無名の人間がコツコツとブログにいそしみ、亡くなったあとに書籍化された例もある。プラトンは魂の不死を主張したが、文字としての魂はたしかに文明が存在する限りほぼ永久的に生き残る。

 

 

悪い面としては、データが永久的に残ることによって傷つく人々がいるという残酷性にある。この件に関しては悲しいので深くは語れない。

もうひとつは、フィッシャー氏の書いたように「たった一回限り」の経験がデジタル作品によって複製可能になることである。これを良い面として捉えることもできるが、例えば映画はすぐにDVDになることを知っている人は結局、少し気になっても観に行かずアマゾンプライムで観ることになったりする。

 

 

むしろ便利だと思う人もいる。自分も半分は肯定的に見てはいる。

しかし、映画のライブ感を味わう動機付けを失せさせる作用が複製化時代にはある。

自分も例外ではなく、映画館に行くのが面倒になってしまっている。ある側面では冷めてしまっているともいえる。

 

 

花見は一年に一回の時期にしかできない。だからこそ稀少性が生まれ、そこに人々が集まる。

人間は恐らく稀少性のあるものを欲する根源的な感性を持っている。満月もなかなか見られるものではないからこの前の満月の時も様々な人が写真を撮っていた。

 

 

 

ビジネス的な稀少性ある価値と、自然発生的な稀少性ある価値は多分違うのである。

そして人間は後者に対して普遍的な感性を古今東西持ち合わせるのである。

これを奪ってはならない、というのがたぶんフィッシャーの思いなのだろうと感じる読書時間であった。

 

 

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関連図書

 

マーク・フィッシャーの本

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