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読書日記1131

読んだ本

樋口恭介『すべて名もなき未来』晶文社 (2020)

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日記

 

マーク・フィッシャー『資本主義リアリズム』に関するページを読んだ。

本屋に頻繁に行くのでカラフルなその本の存在は知っていたが、自分はこういう左派的な本を読んでもむなしくなるだけなので購入には至らなかった。

 

 

樋口氏の本を読むまで、マーク・フィッシャーという人物がうつ病希死念慮を背負って生きていたことは知らなかった。

読めば読むほど、この人物が資本主義においてあらゆるものが、例えば言葉や愛ですらも商品化、定量化されてしまうことに対する悲嘆を読み取ることができた。

あまりにも自分と似ている箇所が多かったので一気にこの章の最後まで読み倒した。

 

 

このような本、思想家というものは自分に都合の悪い資本主義の良い部分については棚にあげて、ひたすら資本主義を攻撃するものだと思われがちかもしれない。実際、自分も資本主義によって経済的な余裕が生まれたことによる福祉の側面では恩恵を受けている側なので、表だって批判することはもうやめている。このブログをはじめた頃は新自由主義的な考え方に容赦なく罵倒・批判していた記憶がある。Twitterでも同様に、ひたすら怒りをぶちまけていた。最初に始めたTwitterのアカウントはのちに凍結となったが、このブログは幸いにも生き残っている。

 

 

マーク・フィッシャーは当事者として、うつ病が「モノアミン仮説(ざっくりまとめれば、うつ病は脳内の物質が原因とする立場)」だという精神医療の物質還元主義に大してやりきれない思いをもっていたことがとても伝わってきた。

自分は20代の終わりごろ、精神疾患は社会的な側面が大きいと確信し、大学院の入試を受けたが、失敗した。(おそらく点数不足、勉強不足による)

その後は自分の母校がどうやら公認心理師を量産したいのだと思うようになってやる気が失せた。

 

 

本書を読むと、マーク・フィッシャーが医療とビジネスの構造に意義を唱えていること様子が伝わる。

アメリカの精神医療の現場について自分はわからないが、「社会科学的にうつ病の原因を考察するのは医者の仕事ではない」と言うのが医者で、社会科学者は「うつ病を考察するのは専門家である医者の仕事だ」という論理になるのだろう。

共同研究というものがあるが、どんどん加速的に専門領域が細分化されていくアカデミズムでは橋渡しできるような人が少ない。

 

 

学問で解決できないものがビジネスにとって変わる。

あらゆる隙間、空間が資本主義という空気で満たされていく。

マーク・フィッシャーのような感性を持っている人は今日、どれだけいるのだろうか。

意外にも多いのではないだろうか。

 

 

大和書房から出ている『ただしさ殺されないために』には、マーク・フィッシャーと似たようなトピックが多くある。

熊代亨『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』も参考になった。

 

 

なんでもかんでもビジネスで解決可能だろうか。

これはなかなか難しい問題であると思われる。

 

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関連図書

 

新自由主義に関する本。(宮台氏の本)

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