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読書日記298

ィクトール・E・フランクル『夜と霧 新版』みすず書房(2002年)を読む。

本屋さんに入り、ふと目に入る。

この本は長いこと読めなかった。

あまりにも非現実的すぎて、目をそらしたくなってしまっていた。

ようやく手に取るくらいの気持ちになれた。

 

 

フランクルは体験をもとに、囚人の心理状態を3段階に分けた。

収容ショック

アパシー(感情の喪失)

解放

 

 

本書は第二段階が内容の大半を占めている。

フランクルドストエフスキーの格言を引用する。

それはとても皮肉なものとなった。

人はどんな状況でも慣れることができる。

フランクルによれば、それは人間の生存本能であるということであった。

 

 

目の前の悲惨な光景のひとつひとつに心を揺さぶられていては命が持たない。

本能はそこに、いわば「麻酔」を与え、感情を無にする。(アパシー)

収容所では政治の話が尽きなかったという。

「そろそろ戦争は終わるかもしれない」

これがそうではないと分かると楽観主義者にとっては苦痛となる。

 

 

また、意外にも「繊細」な人がこの状況で優位になれたともいう。

医学的な視点からみれば本書も「人体実験」の手記のようなものになってしまいかねない。

しかし、ここにはやはり人間の全てが詰まっているように思える。

 

 

つづく