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読書日記48

竹文雄『競争社会の歩き方』中公新書(2017年)を読む。

この本を読むことはある意味苦痛でもある。

著者は今流行りの「行動経済学」の学者である。

冒頭からいきなり転売行為を論理的に擁護する。

 

 

可能な限り私的な感情を排除すると、著者の論理は妥当に見える。

コンサートチケットの転売問題は、経済学の視点から見れば合理的であり、それが市場の原理であることに何ら疑いない。

チケットが抽選であることに「非効率性」があることに異論もない。

 

 

これは経済学という「系」の話に限れば、である。

そのように僕は考える。

ここから先は「道徳」「倫理」「法律」が絡む。

 

 

例えば、ある生物の行動が「善意によって」なのか、「機械的」なのかは人間の解釈に委ねられると考えられる。

転売も人間という生物の行動である。

どうやって解釈をすべきか。否。経済学は経済学が必要とする用語を用いればいいだけの話だ。

つまり経済学的に論じる際は、あくまで転売問題は経済を数学的、論理学的に記述すればよい。

 

 

そして行動経済学は量子的な要素をはらむ。つまりはAであながらBであるという状態、言い換えれば「合理的でありながら非合理的である」事例も取り扱う。

 

 

場合によっては「道徳的でありながら不道徳的である」事例もあるかもしれない。

 

社会を経済学の用語だけで論じるのはナンセンスである。

論点の重要な部分は、社会は常に多元的世界であるということだ。

 

 

特に僕が関心のあるジャンルである。

慎重に読み進めていきたい。

つづく