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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記1284

読んだ本

中野剛志/適菜収『思想の免疫力』KKベストセラーズ (2021)

小室直樹『日本人のためのイスラム原論 新装版』集英社インターナショナル (2023)

フェルナンド・ペソア『新編 不穏の書、断章』平凡社ライブラリー (2013)

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日記

 

『思想の免疫力』

中野氏はコロナ禍に小林秀雄全集を読み、その後『小林秀雄政治学』を書いた。

適菜収も過去に小林秀雄に関する本を書いたということで、二人は意気投合したみたいである。

そのため、前半は小林秀雄に関する話題が中心に進む。

 

メモ

 

(中野氏)"封建制においては、日本の武士団や寺社勢力、あるいはヨーロッパの貴族や教会のように、自分たちで権力をもった集団が存在している。こうした自立した集団は、専制君主が出てくると激しく抵抗するわけですよ。だから封建というのは、本質的に分権的であって、まったく中央集権的じゃないわけですね。" P29

 

(中野氏) "日本では「封建社会の残滓があるから、近代的な市民社会ができないんだ」なんて信じて抜本的改革を叫ぶ人が未だにたくさんいますが、実際には、話は逆で、封建社会の残滓がなければ、近代的な市民社会はできなかったのです。" P30

 

 

その他、丸山真男小林秀雄に対して批判した話などが語られた。

二人は小林秀雄の眼の鋭さを語った。

 

(中野氏)"プラグマティズムは「目的があって、その目的を達するために手段があるんだ」という考え方に懐疑的な思想です。例えば理論というものは、実は、実際に実践することで世間や世の中をどういうものかを知るための手段なのです。知識や理論が先に頭にあって、それを実現するために、政策などの手段があるということではないんです。理論を実践してみることで、現実の世界の実態が分かるようになる。この場合、理論は、目的ではなく手段になっている。それがプラグマティズムの考えです。小林はその考えに非常に近い。" P42

 

・・・

『日本人のためのイスラム原論 新装版』

異教徒に対する寛容さについて、イスラム教とキリスト教との比較がなされた。

いうまでもなくキリスト教が圧倒的に不寛容ということであった。

キリスト教による殺戮の歴史は見るに耐えない。

 

 

キリスト教徒にとって、異教徒は隣人ではない。ゆえに殺害してもよい。

だがイスラム教はそうではないらしい。

 

"イスラム教においては、人間を「異教徒である」という理由だけで殺したりはしない。また、異教徒に対して、イスラム教への改宗を強制したりはしない。なぜか。「宗教に強制なし」とコーランに謳ってあるからである。" P163

 

コーランか、剣か」という言葉が日本で知られているらしい。

小室直樹によれば、これは嘘でありキリスト教によるプロパガンダで間違いないと語った。

 

 

小室直樹は論理によって矛盾を見つけることに長けているように感じた。矛盾した場合、事実に則して考察することによってどちらの主張が嘘なのか分かる。数学のみならず、文章の読解についてもお手本のような人物である。

 

・・・

『新編 不穏の書、断章』

メモ

 

"孤独は私を絶望に追いやるが、他人といるのは気が重い。他人の存在は私の考えをそらしてしまう。私は、特別な気晴らしを感じながら他人の存在を夢見るが、その仕方は分析的に定義することはできない。" P217

 

 

"私たちは誰でも二つの人生がある。真の人生は、子供のころ夢見ていたもの。大人になっても、霧のなかで見つづけているもの。偽の人生は、他の人びとと共有するもの。実用生活、後に立つ暮らし。棺桶のなかで終わる生。" P73

 

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