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読書日記1207

読んだ本

井上達夫『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください:井上達夫法哲学入門』毎日新聞出版 (2015)

金慧『カントの政治哲学:自律・言語・移行』勁草書房 (2017)

高島和哉『ベンサムの言語論:功利主義プラグマティズム慶應義塾大学出版会 (2017)

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日記

 

引き続き「カントの義務論 VS 功利主義」を咀嚼するためにいろいろと読みながら模索した。

ベンサムの構想した功利主義は、その言語論には共感できるものの、結局は快楽主義者と変わらないのではないか、と思ってしまう。

自分は今の力では現代の政治哲学論争についていけないので、今日は井上達夫氏の本を読んだ。

仲正昌樹氏が、リベラルとネオ・リベラリズムの違いを説明できないようでは話にならない、ということを言っていたのでそのくらいは押さえたいと思った。

 

 

井上氏によれば、リベラリズムは自由よりも「正義」を重んじる立場だという。

"私は「リベラルの基本的な価値は自由ではなく正義だ」という趣旨の基調論文を書きました。それが私のリベラリズム理解です。" P10(『リベラルは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください』)

 

 

次にリベラリズムの起源について説明がなされた。

リベラリズムは「寛容」と「啓蒙」の二つを起源とするとされる。

 

"この「啓蒙」の伝統と「寛容」の伝統が、リベラリズムの歴史的淵源(えんげん)だということは、ほぼすべての研究者の了解です。" P12 (『リベラルは嫌いでも、リベラリズムのことは嫌いにならないでください』)

 

 

井上氏によれば、リベラリズム研究で影響力を持つオックスフォード大学ジョン・グレイは「寛容の伝統はいいが、啓蒙の伝統はダメだ」と考えている。理性の偏重による弊害は『啓蒙の弁証法』を持ち出すまでもなく、ロべスピエール、マルクススターリン毛沢東などの歴史を考慮すれば理解はできる。

 

『反共感論』と『みんな政治でバカになる』、この二つの本は政治原理において、理性の役割をかなり重視した内容となっている。

自分がこの二つの本の主張に懐疑的なのは、理性が失敗した歴史が数多くあるからであるとともに、男性的、権威主義的で冷徹な面を感じるからでもある。

 

次に井上氏が用いる、正義概念に則しているかどうかを検証する「反転可能性テスト」というものが説明された。

自分の主張が相手の立場と交換しても成り立たなければ正義ではない、というものであった。

 

日照権の例で説明された。

自分が日を浴びているときには犠牲となっている住民の声を無視し、自分よりも高いマンションが立ったときに「ふざけるな」と主張するのは、立場の入れ替わりによって主張が変わっていると分かるので、正義概念(=普遍化不可能な差別の排除)に則していないということが判明する、というテストであった。これはとても参考になった。

 

・・・

 

『カントの政治哲学』のつづきを読み進めた。

"たとえ最終的に目指すべき状態が国際国家や世界共和国であるとしても、そうした法的状態への移行はある国家が他国を強制することによって実現されるべきではない。" P24 (『カントの政治哲学』)

 

 

介入と平和という難しいテーマを考えさせられた。

介入とはいわば「コーティング」のようなもので、中身までは変えることはできないということだ。

教育もしかり。表面的な「コーティング」で自律は生成されない。

アナロジーではなく、これは普遍だ。

 

・・・

 

ベンサムの言語論』のつづきを読み進めた。

法の介入だけでは「幻惑=イデオロギー」に抗うことはできないとベンサムは考えた。

次にどうするのかと、気になって読んでみたところ、ベンサム倫理学の土台に心理学を据えようとしたそうである。

 

詳しくはまだ理解できていないが、戦略は理解できた。

意訳すれば、ベンサムはデオントロジストの育成によってイデオロギーによる誤謬や虚偽の言説が普及することを防ごうと考えた。

これが心理学とどう関係しているのかを次回以降の読書で意識したい。

 

つづく

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