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読書日記975

読んだ本

永井敦子・畑亜弥子・吉澤英樹・吉村和明共編『アンドレ・マルローと現代:ポストヒューマニズム時代の<希望>の再生』上智大学出版 (2021)

引用元:版元ドットコム

引用元:版元ドットコム

池澤夏樹『楽しい終末』中公文庫 (2012)

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メモ

 

"『文学の新時代』においてプーライユは、この世には二種類の作家が存在することを示し、一方を人間的に読み手を感動させる作家、他方を知的に私たちに触れるだけの作家とし、前者は「まさにそうだ、その通りだ、まったくだ」と読者に感じさせ、後者は「善」、「美」を感じさせるだけで心に訴えかけるものはないとして、前者のタイプの作家を特権視している。(・・・)その意味において、『征服者』を刊行したマルローは、一九三0年代初頭のプーライユにとって輝かしい存在に見えたのだろう。" P34 (『アンドレ・マルローと現代』)

 

 

"ドストエフスキーは、神なき革命論は必ず破綻するということを証明するために『悪霊』を書いた。" P294 (『楽しい終末』)

 

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日記

 

今日は文学について多面的に考える一日であった。

結果的に以上の4冊を横断的に読み込む一日となった。

ヒューマニズムという言葉はいまや廃れかけているように見えるが、書店へ行くと「ポストヒューマニズム」や「人新世」、あるいは「ポスト○○」といった表現をよくみかける。

 

 

その状況をみれば、「ヒューマニズム」という言葉が過去の遺産になっていると見なすにせよ、現在はその延長線上にあるという見方をしている人が一定数いることは疑いないと見ていいだろう。

 

 

・・・

 

 

ヒューマニズムが仮に「人道的な」あるいは「人間本来の」といった意味であるとして、そこには「尊厳概念」というものが念頭に置かれるだろうと思われる。

「人間の尊厳」という言葉は抽象的であるが、これは実務的にも様々な分野・領域で使用される考え方だと思われる。

ヒューマニズムの否定的な側面に関しては執行草舟氏の著書において余すことなく語り尽くされていたのでここでは語らない。

 

 

個人的な関心はその尊厳概念と対立すると思われる「命よりも大事なこと」、すなわち「正義」であったり「信念」というものを社会的にどう位置付けるべきなのかという問いである。

そしてこの人間的な問いかけこそ文学が取り扱うべき題材なのだと個人的には考えてる。

そのようなことを念頭に置きながら以上の4冊を読んでいた。

 

・・・

 

 

このように考えていくと必然的に政治的な話、あるいは倫理的な話に繋がっていく。

かくして文学と政治が接近するわけであるが(アンドレ・マルローの小説は政治性がやや強いため、翻訳出版が下火になっていると『アンドレ・マルローと現代』に書かれている。)、そのことに関してはサルトル『文学とは何か』をよく読んでからまた次回以降書いていきたい。

 

 

執行草舟氏の定義に則したヒューマニズム、つまり人間の生命を絶対的な価値とするこの考えを正義とするならば、「命よりも大事なこと」は正義と対立するように思われる。

話が広がりすぎると論点がめちゃくちゃになるので狭いことを言えば、端的に安楽死やテロといった死に直結する問題である。

安楽死を選択する者に対して施される「死」は「尊厳死」であるが「名誉ある死」とは思えない。

 

 

一方、殉職は「名誉ある死」であるが「尊厳死」とは言えない。

「尊厳」と「名誉」は実は似て非なる概念ではないだろうか。

ヒューマニズムのレンズで見ればテロは「非道」であり「悪」である。

執行草舟氏がいうには、相対的でしかない「正義」は反対側からみれば「悪」も「正義」となる。

 

 

だからといってテロを肯定することは愚かであるが、今日の世界的な不安定の根本にあるのは結局のところこの相対的な「正義」にあるのではないかとどうしても考えてしまう。

そしてその人間がもつ根源的な原理を文学は絶えず問いかけるべきなのである。

 

 

その視点からみれば確かに「善」や「美」を抽象的なかたちで読者に提示するだけでは芸術作品としては価値が生まれるのかもしれないが、文学としての価値というものは疑問である。

 

 

今日はまとまりのない文章となってしまっているが、引き続き文学者の一連の歴史を学ぶことによって言葉の在り方、人間の在り方というものを絶えず問いかけていきたい。

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