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読書日記992

読んだ本

ロージ・ブライドッティ『ポストヒューマン:新しい人文学に向けて』フィルムアート社 (2019)

引用元:版元ドットコム

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メモ

 

"誇りをもつ人間は、他人によって投影された自分ではなく自分の中に充実した自分自身を感じることを好む。" (『ピェール 黙示録よりも深く (下) 』P115 )

 

"進歩的な政治信条として、人文主義は、連動する他の二つの考えと特権的な関係をもっている。その二つとは、平等の追求による人間の解放と、合理的な統治による世俗主義である。これら二つの前提は人文主義という概念から生まれたものであり、それはまるで古代の女神アテナがゼウスの頭から、戦闘のために完全武装した姿で生まれたかのようである。" (『ポストヒューマン:新しい人文学に向けて』P51)

 

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日記

 

本書では『利己的な遺伝子』や『さらば、神よ』の著者、生物学者リチャード・ドーキンスに対する批判が書かれていた。

執行草舟氏の著書を読み込んだおかげで、現代ヒューマニズムと科学万能主義の関係が頭に入っていたこともあり、この批判の対象は彼(=リチャード・ドーキンス)の「無神論」ゆえの「科学に対する狂信的な万能感」だということが理解できた。

執行草舟氏の批判対象は主に「還元不能物質」、つまり人類は原子力による核燃料ゴミという「負の産物」を「大量に」生み出してしまっているのが今日の神を忘れた科学万能主義だと喝破する。

 

 

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読み込んでいくと、本書も執行草舟氏と同じように白人主導のヒューマニズムへの批判ということは伝わる。

現に地球規模で問題は山積みとなっている。地球温暖化、プラスチックごみ問題、放射能汚染物質、食料問題、エネルギーの資源問題など、なかなかに現代社会は大きな問題を多く抱えている。

議論の論点は、抽象的には「方向性」の問題であるように思われた。

原理的な問いかけであり、ヒューマニズムが今述べたような問題を生み出してしまっている以上、もはや人間が生きるための条件、普遍性を保証できるものではなくなってしまったのでその代替、オルタナティブの原理はどういうものか、という考察となっている。

ポスト構造主義で解決できなかった問題への取り組みという位置付けである。

 

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非常に真面目すぎる本であるので読んでいて疲れる時もあったが、非常に人間の根源に迫る問いかけであり、科学技術が発達してしまった以上、もう後戻りはできないのでこのあとの世界はどうあるべきか、という問題提起を促す本書は誰にとっても読む意義のある内容となっているはずである。

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