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読書日記370

正昌樹『ポスト・モダンの左旋回 増補新版』作品社 (2017年) を読む。

本書は仲正氏が1998-2001年に書いた論考をまとめ、一度出版されたものを再度改稿したものとなっている。

 

 

本書によれば、1990年代前半、日本の思想界は閉塞感を抱えていた。

著者の感覚としては、新刊の思想書を読んでも既にどこかで論じられたような気がするもので目新しさがなかったとのこと。

1980年代は埴谷雄高吉本隆明をはじめとし、ニューアカデミズムの到来とともに浅田彰柄谷行人らの論客が文芸批評界で活躍していた時代とされる。

 

 

当時、思想という名の台風の目に位置していたものは「マルクス」であった。

しかしながら時代とともに全共闘が終わり、マルクス主義も次第に廃れていく。

その後ろめたさや今後の身の振り方について、浅田彰は『構造と力』において「シラケつつノリ、ノリつつシラケる」ことを提案する。

仲正氏によれば、浅田氏の本はひとつの知の構造にノリ、ノリつつもまたシラケる。要するに自分の居場所を定めることをやめようという主旨の本であったとされる。

 

 

マルクスは「存在が意識を規定する」と書いたが、その存在というものが複雑で、「屈折」していると仲正氏は言う。

2000年代の思想界はマルクスの「リサイクル」とも呼べる状況になっていて、マルクス主義が屈折していった。

 

 

かくしてポスト・モダンの「末期症状」とも言える様相を呈した。

本書によって2000年代までの日本思想界がマッピングされ、どういう行き詰まり状態になっているのか、どういうことが論じられていたのかを軽くおさえることができた。

 

 

つづく