こちらを読み終える。
後半はプラスチック問題、無印良品の哲学、ミニマリズムを扱う。
プラスチック問題の項ではEUと日本の比較がなされた。
EUにおいては環境NGOの基盤が強く、政権と議論が頻繁になされ、政策決定に多大な影響力があるとする。
日本では環境NGOの基盤が弱く、国が主導していかなければならない状況であり、かつリサイクル法では効力に限界があるということが示された。
もはや常識になりつつあるが、マイクロプラスチック(微少なプラスチックごみ)は1億トン以上海に存在していて、海の生き物が誤食している。
そしてそれを介して人間の口に戻ってくるという悪循環を生んでいる。
このまま進めば、地球上の魚の重さとプラスチックごみの重さが等しくなるという衝撃的な予測がなされている。深刻である。
無印良品が停滞状態から黒字へ転換した背景とは。
そこには非顕示性や清潔性、機能性など、日本の従来の思想を取り入れ、ひたすらその美学を追求することで、時代に逆行する形でも結果的にうまくいったとされる。
シンプルかつ徹底的に無駄のない製品。
この思想とミニマリズムの隆盛に僕は共通点を見出す。
ミニマリズムはブランド品を持たなくても幸せになれるということを暗に示す。
モノはいらない。シンプルでいい。
無印良品は「無」印という非ブランド性、シンプルでも「良品」であることの二面性を両立させることを可能にした。
今後、世界の消費者行動は大きく変わるかもしれない。
そのことを感じさせる。
本書ではミニマリズムを「下からの啓蒙」と表現する。
時代をリードするのは知識人ではなく、一般の人にシフトしつつあるのではないか。
これからはSNSの普及によって、なんらかの社会運動が発生する確率が高くなっていく。
そのなかで、一般の人の感覚とずれた経営をしていては間違いなく淘汰される。
貧乏国日本と揶揄されるが、僕はそれでいいと考える。
モノが溢れる社会はもはや地球レベルで有害ではないか。
これからは、モノは地球と共存可能なレベルにまで減らし、コトを増やせばいい。
そう感じざるを得ない本であった。
つづく
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この本の内容に近い本
ジェニー・オデル『何もしない』早川書房(2021年)