過去の読書記録を批判的に吟味したい。
今回はベンジャミン・クリッツァー『21世紀の道徳』を取り上げる。
ざっくり言えば、直感に左右されやすい大衆には期待できないから理性を尊重し、理詰めで道徳を議論していこう、という内容であった。
『デカルトからベイトソンへ』を再読して思ったのだが、理性の力なんてたかが知れていないだろうか。
テクノロジーのポジティブな面について否定する気はないが、一方で格差に苦しんでいるひとは数多にいる。
なにが科学の進歩だ、と思うときも当然ある。
参加しない意識によって構成される世界において、科学の万能性を信じきってはいけない。
科学を否定しないが、その副作用にも目を向けるべきである。
熊代氏の本は読む意義があると今でも強く思う。
監視社会なんていうネガティブな言葉は使いたくないが、生きづらさは科学の発達と重なっている。
何が「文学は役にたたない」だ。
くそくらえ。
人文は今日の生きづらさを打開する力を内包しているのである。
狭い視野でしか物事を考えられない専門家がアドバイスするのではなく、あらゆる分野を統合的に俯瞰できるゼネラリスト的な人物がメディアで発言してくれることを期待する。
(松岡正剛氏いわく、現在そのような人物はいない。AbemaTVより)