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感想
簡単なあらすじ
丸栄社の編集部長の牛河原は、出版にかかる経費を著者と折半(厳密には本書のなかでは半分ずつではないが便宜的に)する「ジョイント・プレス」方式によって「全国に本を出す」という「夢」を売ることを生業としている。
俗に言う「意識高い系」はこの商法にまんまとハマり、日々暴利をむさぼる丸栄社であったが、ライバル社が登場し、ある大胆な戦略で攻防戦を繰り広げていく。
・・・
解説によると、これはB社が過去に実際に行っていたのだという。
一般に「自己顕示欲」といわれるものが強い人にはこの商法と親和性が高い。
見事に騙されていく執筆者に、こちらもヒヤッとする。
ある意味、特殊詐欺といわれるものに近い。
全員(騙された人たち)に多くの共通点がある。
・業界の知識が足りない(ISBNコードの取得方法や自費出版の仕組みについて)
・自分は他人とは違うというプライド
・自分のまわりにいる人への鬱憤
・執筆という経験が足りない
端的に、稼ぐのに楽な方法はないというものだと思われた。
また、自己顕示欲について言えば、丸山健二氏と同じように、今日の出版業界が崩れかけている本質を世に問うものになっている。
解説によれば、大手出版社にはノルマが課されており、要請がなくとも本がつくられる構造となっている。
読者のための本ではなく、売り上げのための本づくりがなされることによって長期的には沈没していく。
これと似たようなことを丸山氏以外の他の作家も書いていた。
ただ単に面白い物語を語るだけでは映画やYoutubeに勝てるわけがないのは自明である。
量ではなく質でしかない。
そういう覚悟を背負うときが来たのでは、と誰かが書いていたのを記憶している。
本書はメタファーとして機能しているように見えたが、本はいろいろな解釈ができる。
もしかすればそのような意図とは別の意図も働いているのかもしれない。
この小説は出版業界について考えるきっかけを与えてくれた。
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