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読書日記と哲学がメインです(毎日更新)

読書日記417

本祐一郎『フランス現代思想史:構造主義からデリダ以後へ』中公新書 (2015年) を読む。

個人的に確認しておきたかったことは、何故フランスは実存主義から構造主義へと切り替わったのかということである。

結論としては、今の時点では確認することはできなかったが、レヴィ=ストロースによる実存主義哲学者サルトルへの批判を確認することはできた。

 

 

レヴィ=ストロースの仕事は、「未開」といわれる民族の親族関係に数学でいう「群論」の構造を見出したことにある。

本書によれば、レヴィ=ストロースがフランス数学者集団「ブルバキ派」のアンドレ・ヴェイユ (哲学者シモーヌ・ヴェイユの兄) に接触し、数学的に解読してほしいと依頼していたことが分かる。

 

 

今日では、一部の人々がポストモダンを「ポモ」と呼び、フランス現代思想は批判の対象となっている。

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

 

しかしレヴィ=ストロースの仕事は、部分的には数学を基盤としている。

本書によれば、そのあとの思想家が批判の対象となっており、レヴィ=ストロースは「ポモ」の批判の対象外であると書かれている。

 

 

また、レヴィ=ストロースは『野生の思考』においてサルトルを批判する。

レヴィ=ストロースは「未開」という言葉を使わないことにし、代わりに「冷たい社会」と読んだ。また、あらゆる職が分化された先進国の社会を「熱い社会」とした。

サルトルは「冷たい社会」に対して偏見を持っており、彼らの複眼的思考能力を見逃している、といった主旨ある。

 

 

 

実存主義がどのようにして衰退したのかまでは分からなかったが、まずはレヴィ=ストロースによるサルトル批判まで理解することはできた。

つづく

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関連図書

文庫クセジュシモーヌ・ヴェイユ

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

読書日記416

正昌樹『続・FOOL on the SNS -反ポストモダンに物申す-』明月堂書店 (2018年) を読む。

こちらの続編となっている。

nainaiteiyan.hatenablog.com

 

 

本書を読むと、プロから見ると素人はどういう点において批評する能力がないのかが理解できる。

現代哲学では知覚や心について掘り下げる研究が行われている。

これらは認知科学や心理学に接近する学問となっている。

仲正氏によると、ポストモダン系の思想家が論じてきたものはあくまで「メタ」レベルのお話で、解釈に留まる。

直接科学に関する領域まで取り扱っているわけではないとされる。

 

 

素人はその細部について論じることができない。

ソーカル事件をきっかけに掲示板等、ネットを中心に展開された仲正氏への攻撃のように、そのソーカル事件の詳細・全容を把握せずにただ拾ってきた情報を鵜呑みにしているだけでは、自分の頭で考えたことにはならない。したがってそれは批評でもなければただの人格攻撃となる。当然と言えば当然である。

 

 

人文系の博士課程においては、海外の論文を原典から丹念に読み込むことは絶対的に必要なことである。それを行っていない人間に何が批評できるというのか、というのが主な主旨であった。

 

 

学問としての哲学と、人生論のような教義は似て非なるもの。

哲学とは物事を掘り下げる作業であって、後者は必ずしもそうではない。

最近は英語ですら読むのが億劫となっている私は、哲学を大学院で研究しようとまではとても考えられない。本書を読むと気が遠くなる。

 

 

つづく