読んだ本
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日記
対話形式で展開されるので読みやすく、かつ内容的にも深みがありひとまず106ページまで読み進めた。
主人公のA君と精神科医の著者が語り合うスタイルとなっている。
あらすじは、A君は精神科医に「学校や政治にまとまりがなく、てんでんばらばらになっている」と漏らし、不満に思っている。そこで精神科医と「まとまりのなさ」について一緒に考え、権威と権力の構造を掴んでいくという流れとなっている。
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いちいち内容をまとめるとつまらない記事となってしまうので感想だけを書いていく。
権威は例えば学会、アカデミズムといった高度な技術を誇る機関にあることは疑いない。
しかしその機関が国民になにか強制力を行使できる権限はない限りにおいて、たしかに権威はあるが権力はないと言える。従って権威と権力の違いは以上の例で区別することは容易である。
ところが一見違った概念にみえるが、「いうことをきかせる原理」から見ればお互い似た側面を持っていることが分かる。
医者が言っているから正しい。
国が言っているから正しい。
権威には説得力がある程度存在する。
権力は強制力と伴ってむりやり「いうことをきかせる」力を持つ。
権力なしに権威は存在し得るが(アカデミズムなど)、権威なしに権力は存在し得るだろうか。
話を進めていくと、どうやらまとまりのなさは「権威の失墜」にあるのでは、となってA君は「英雄が必要だ」と主張する。
つまり権力はあっても権威がなければ「まとまりのなさ」に繋がるかもしれない。
しかし精神科医は冷静に考え、そうなると英雄待望論に飛躍することを懸念し、ヒトラーのような人物が来る可能性もあれば真の英雄が来る可能性もあり、つまりは賭けになると判明する。
その後は「いうことをきかせる原理」とは比較の問題であることが分かる。
学生が先生のいうことをきかないのは先生に信頼がないからである。
しかし、凄腕の社長であったりプロのスポーツ選手の言葉に彼らはなびくかもしれない。
すると権威というものは、「いうことをきかせる側」と「いうことをきく側」の相対的な力関係にあることが分かる。
自分よりも明らかに能力が低い人間を信頼できる道理はない。
従って自分よりも遥かに能力が高い人間に判断を委ねることになる。
するとどのような英雄を選ぶべきかという問いを設定するならば、ここまでの議論を追えば、それはなかなか難しいことだと分かる。
なぜならば、自分よりも優れた判断力を持つ人間を、彼より判断力がない人間たちが選ばなければならないからである。
かくして、権威と権力のあれこれについて考えをめぐらせてもらえる読書時間であった。
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