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読書日記482

上春樹『職業としての小説家』新潮文庫 (2016年) を読む。

昨日、『雑文集』において村上春樹が小説家になる前にジャズ・バーを経営していたことが語られていた。

本書にもそのことが書かれていた。

 

 

村上氏は、ながくなるので全部は話せないが、就職するのは嫌だったと語る。

店を開くハードルが今ほどには高くなく、夫婦でお金を貯めて開いたのだそうだ。

野球観戦中に小説家になろうと、ふと思ったというエピソードも語られた。

 

 

村上春樹は、小説家には変わった人が少なくはないと語る。

1922年にプルーストとジェイムズが席を共にした時に、お互い全く喋らず、二人の会話を期待した聴衆をがっかりさせたエピソード等も語られた。

この話を読むと田中慎弥氏のことを思い出す。

 

 

小説というものは孤独の時間の結晶化だと個人的には思っている。

それを田中氏は『孤独論』のなかで文章で表現していた。

しかしながら、真の意味でそのような小説は少ないのではないだろうか。

 

 

その後はノーベル文学賞芥川賞等について、そして村上春樹の過去について語られた。

本書を読んで文学というものの力について再度思いをめぐらせた。

出版業界が不調であるのは、本当にテクノロジーによるものなのだろうか。

深いところでは、実はそうではないのかもしれない。

 

 

つづく