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読書日記469

山良雄『小さな声、光る棚 新刊書店 Title の日常 』幻冬舎 (2021年) を読む。

本書は、大型書店に勤めた後に独立して自分の本屋を開いた方の、本をめぐる日常を綴るエッセイとなっている。

 

 

1~2年前、私はこのブログに資本主義を取り巻く日常についていろいろと書き残した。

特に、資本主義の原理が働くと陳腐化するという側面についてはいろいろと書いてきた。

本書では、利便性が組み込まれると、人の情緒に触れ、読む人を根底から変えるような本は軽視されると書いてある。

 

 

これも何回も書いているのであまり蒸し返したくはないが、要するに半年経てばBOOK・OFFの110円コーナーに置かれてしまうような、「道具」としての本が市場を占める割合が増えるということだろう。

 

 

市場の原理に抗うことは容易ではない。

商売として本を売る以上は売れる本を置かなければならない。

ただ、売れるような本だけが棚に置かれることは悲しいという、相反する事態が起きているのである。

 

 

また、171項において、著者はコロナ禍で発生したトイレットペーパー等の買い占めを目の当たりにし、「言葉をうしなった」と漏らす。

著者は自分の頭で考えない人を間接的に批判している。

 

 

部分的に本が道具に成り果てている。

今すぐ役に立つような本を人は求めている。刺激的な本を求めている。

書店の店主としておもうところがいろいろとあるのだろう。

だが、やはり商売は商売。

本当に良い本は廉価であることもまた事実ではある。

この矛盾はあまりにも大きすぎるだろう。

 

 

つづく