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読書日記432

田晶子『無敵のソクラテス』新潮社 (2010年) を読む。

実業家とプラトンソクラテスが富と幸福について語る。

経済倫理について、あっさりと結論まで辿り着いてしまい、私はぽかんとしてしまった。

内容は以下の通り。

 

 

他人から承認を得ることで幸福を得る人間は、自分で自分を幸福を思うことができない。

心が先か物が先か。

物がいくら豊かにあろうが、幸福を物自体が決めることはできない。

物を認識するのは心であり、結局のところ幸せを判断するのは心次第である。

従って、幸福を決めるのは物ではなく心である。

常に心が先行する。

 

 

実業家は公正なルールにもとづけばビジネスで人を幸せにできると考える。

公正なルールを守ることは、すなわち形式を遵守することである。

形式は人間の外の話である。

こちらは守らなければ罰則がある。

一方、友愛や謙遜、感謝といった内の領域に関しては、守らなくても罰則はない。

外と内は独立している。

 

 

故に、自由競争においては利益の追及と品性の追及は相容れない。

この解決法として、池田氏マルクスとは違い、富の無価値化を推奨する。

勿論、現実には不可能であるのであくまでもプラトン『国家』に捕捉した形となっている。

 

 

事実と価値の二分法について、論理的に心が全てを司ることが示された。

経済倫理は本質的に社会と相容れないのだろう。

 

 

つづく