中島義道『人生を<半分>降りる』ちくま文庫
小林秀雄『人生について』中公文庫
を読む。
メノンを読んで、知らないことを「知る」ことの不思議さについて思うことがあった。
知らないことが知っていることになる。
0が1になるとは、何を意味するのか。
ソクラテスによれば、知ることは「想起」であるとされる。
つまり、「気がつくこと」に近い。
僕はこのことと作曲は似ていると感じた。
極端にいえば、曲というものはそれが生み出されるのを待っている。
ピアノが存在した瞬間から、全ての曲が弾かれる余地が発生する。
本質的には人間が作り出したものではなく、もともと自然界に隠れている。
それを「想起」させたものが曲となる。
中島氏は50を超えた時にカントの研究をすることに虚しさを覚えた。
ひとつのことに執着することは、他の物事への関心を捨てるに等しい。
そこにつまらなさを感じたそうである。
パスカルもそれを感じていて、何事にも長ける人間であれ、と『パンセ』に書いた。
つづく