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ベストセラーは社会の精神を診断する

と僕は本を読みつつ思った。

参考文献:与那覇潤『知性は死なない 平成の鬱をこえて 増補版』文春文庫2021年

 

 

本書ではアドラー心理学『嫌われる勇気』がベストセラーになった背景を、時代の流れとともに説明する。

2010年代は自己責任という言葉が多く使われていたように思う。

(特に橋下徹氏など)

 

 

 

派遣で打ちきられようが、正社員の職をリストラで失おうが、それは本人の責任ですよね、という空気は確かにあったように思う。

アドラー心理学は機能主義に近い。

例えば、うつで仕事を休んだとすると、アドラーの説明ではこうなる。

「それはうつだから休むのではなく、休みたいからうつなんだ」と。

 

 

僕は『嫌われる勇気』を大学生の頃に読破した。一貫して、出した例のように、あらゆる心理状態の原因と理由が逆転されて説明されていた。

つまりは、この文脈において、「うつ=仮病」という図式が成り立ち、「うつなんて嘘だよね」という空気になってしまう。

それは、「体調管理は自己責任」という常識が追い風にのって当事者に迫ってくるのだ。

そういう価値観があったから『嫌われる勇気』がベストセラーになったんだ、と与那覇氏は語るが、僕も同意する。

 

 

「社会的うつ」の存在は否定できないが、「仕事を休みたいからうつなんだよね」というのはどう考えても論理の飛躍である。

つづく