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社会問題を考える時には、「何が変わっていないのか」を考えることが大事。『心とトラウマ』松岡正剛 を読んで

の本の中で「ひきこもり」に関する本が紹介されている。

参考図書:塩倉裕『引きこもり』ビレッジセンター出版局 2000年

 

塩倉氏は、1990年代の凶悪犯罪が「引きこもり」によっておき、社会が引きこもりを「社会悪」とし、その原因を、引きこもりが社会の人々に不安を与えていると考えた。

そしてその不安を5つあげている。

”(1) 犯罪を恐れる警察的・治安的な発送からの不安

(2) 禁欲的勤勉をよしとする労働倫理が崩れることへの不安

(3) 超高齢化社会を目前にした社会保障面の不安

(4) コミュニケーションにかかわる漠然とした不安

(5) 世代交代が機能不全に陥るのではないかという不安”

P42 

 

僕は基本的に、人間の本質的な部分は変わらないと見る。それは、人間も生物も、進化は長い間かかるからである。

であるならば、考えなければならないのは日々変動する「社会」「経済」「政治体制」ではないだろうか。

 

1~5はそれぞれ社会に関係するものであり、考えられ得るので、次は経済の面を調べる。

2000年といえば、バブル崩壊後の世界である。

当然、失業率も増加し、賃金も低下する。また、高齢化による年金額の減少も確かである。

政治はどうだろう。この頃は小渕恵三内閣で、「地域振興券」が配られた時代であって、「デフレスパイラル」の時代でもあった。当時から貧困層が多くいたと推測される。

 

であるならば、この時代 (1990年代後半) から「格差社会」が広まっていったと予測が立つ。

大きく変わったのは、まず経済である。当然である。バブルが弾けたのだから。

 

僕の見立てでは、コミュニケーションや労働倫理、世代交代など二の次である。

この当時は年金支給開始年齢 (満額) が、60→65へと法律が変わった年と重なる。(平成12年)

 

どう見ても経済が大きい要因だと考えられる。

現在も度々凶悪犯罪が起こるのは、超高齢化ではなく、超格差社会による貧困層の増加であると考えられる。(つまり3は大きい)

 

すなわち、「何が変わっていないのか」をしっかり考え抜くことは大事であると思われる。塩倉氏は、部分的に相関関係の解釈を見誤ったのではないだろうか。引きこもりの何がいけないのか、よく考えると見えてくるはずである。